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夜。
公演を終え、風呂を済ませてから自室のベットに寝転がる。
ふかふかな布団が心地いい。
クリスティーヌは目を閉じて、ただただ今日の公演の振り返りをした。
もっと滑らかに踊れるはず、今日のメグの動きを真似してみよう。
もうすこし花の様子を観察し、踊りで花びらを表現しなければ。振り返りは尽きることのない。
まだまだ高みに行けるはず。

「湯冷めするぞ、クリスティーヌ」

不意に低い声が聞こえ、目を開けると、そこには黒いマントを着込んだ講師がいた。

「そうね」

「早速だが、今夜の公演の事だ」

「待って」

椅子に座ろうとする講師の動きに待ったをかける。
講師…エリックは、クリスティーヌを見た。

「どうした」

クリスティーヌはベットから起き上がり、意を決したようにエリックを見た。
昨日の返事をするために。

「昨日の事だけれど…」

「…」

エリックは黙ってクリスティーヌの隣に座る。
ベットはふかふかで、この布団も随分前にエリックが匿名でクリスティーヌに贈ったものだ。

「無理はするな」

「無理なんかしてないわ」

エリックはクリスティーヌを見れば、頬がほんのり赤かった。
本当に無垢で綺麗だ、とエリックは思う。

「…きよ」

「…?」

「好きよ。貴方が、好き」

クリスティーヌは真っ直ぐエリックを見て言った。
エリックはクリスティーヌから目をそらす。

「そうか…」

「…」

「良かった…私が、この日をどれだけ待ち望んだか…」

クリスティーヌはにこりと笑い、顔を彼の肩に寄せた。

「さ、早く行け、これから点呼だろう」

「えっ!」

クリスティーヌは慌てて時計を見る。
時刻は、定刻まであと十分を指していた。

「いけない!急がなきゃ!」

クリスティーヌは立ち上がり、慌てて部屋を出て行こうとする。

「クリスティーヌ」

「何?」

エリックはベットに腰掛けたままクリスティーヌに微笑んだ。

「愛している」

クリスティーヌは胸に甘酸っぱい気持ちを感じながら部屋を出た。
部屋に一人残されたエリックは、先程のクリスティーヌの様にベットに寝転がる。

「クリスティーヌ…好きだ」

クリスティーヌが点呼から戻ってきたらどうしてやろうかと、エリックは目を閉じて考えるのだった。






fin

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