「渡したいもの?」

エリックは眉間にしわを寄せ、クリスティーヌを見る。
クリスティーヌは沢山ある中から、小さな黒色の紙袋を掴む。
その瞬間、エリックは内心喜んだ。

「貴方に似合うと思って…蝶ネクタイよ」

紙袋からまた黒い箱を取り出し、開けると、そこにはまた黒い蝶ネクタイがあった。アクセントに宝石が少しだけついている。

「クリスティーヌ…」

信じられない、とエリックは思った。

(クリスティーヌが、この私にプレゼントだって?)

エリックは蝶ネクタイを受け取り、クリスティーヌの手を取る。
今、この手で抱き締められたらどんなに幸せだろうか。
エリックは悩んだが、その白い手の甲にくちづけを落とし、後ろ髪を引っ張られる思いでクリスティーヌから離れた。

「ありがとう。大切にする。それじゃあな、クリスティーヌ」

「ええ、おやすみなさい」

鏡の向こうに消えた講師をしばらく見つめた後、クリスティーヌは私服を脱ぎ捨て、室内用の服に着替える。
さて、夜の点呼までにお風呂に入らなければ。

「ふふ、あの人、喜んでくれたわ」

クリスティーヌは喜びを隠し切れてないエリックの表情を思い出しながら、足取り軽くお風呂場に向かったのだった。









fin

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