クリスティーヌは再び蝶ネクタイを見る。
紺色の蝶ネクタイ、黒色の蝶ネクタイ、紅色の蝶ネクタイと、様々な色、形がある。
値段を見れば、十分買える額だった。
普段外出出来ないため、貯まりに貯まるお金を手に、普段外出に厳しい劇団に感謝した。
少し悩んだ末、クリスティーヌは、漆黒に、ダイヤのアクセントが光る蝶ネクタイにした。
あの講師は喜んでくれるだろうか。
それとも、くだらない事をする暇があれば歌の練習をしろ、と叱咤してくるのか。

「ま、いいわ。…すいません、これ頂けますか?」




ーーーーー




「遅くなってごめんなさいメグ…って、凄い買ったわね」

蝶ネクタイを買い終え、メグがいる四階に向かえば、紙袋をこれでもかと持っているメグがそこにいた。

「服と化粧品よ。折角だもの、お金を使う機会があるとすれば今日しか無いわ」

「そうね!私も買っちゃう!」

それからは楽しい時間があっという間だった。
最新のドレスを買い、淡い口紅を数本揃え、舞台でもつけれそうなアクセサリーを、たんまりと買った。
どれもクリスティーヌらしい、淡く控えめなアクセサリー。
メグは母親にあげるプレゼント選びに長らく悩んでいたようだが、髪飾りにした。
二人はパーラーに行き、甘いものを食べ、帰る頃にはすっかり夜になっていた。
オペラ座についた二人は、薄暗い廊下を歩く。
紙袋が沢山あり、歩くのもやっとだ。
その間も話が尽きることはなかった。
やがて寮の部屋に着き、メグはにこやかに言った。

「あー、楽しかった!じゃ、クリス
ティーヌ、また後でね」

「ええ、メグ、後でね」

そう言って扉を開けると、自分のベットに腰掛け、自分を睨んでくる一人の男がいた。

「…ああ、びっくりした」

クリスティーヌは部屋に入り扉を閉めると、男は立ち上がった。
男は、自分のもう一人の講師、エリックだった。

「こんな時間まで、さぞ楽しかっただろう」

「ええ、楽しかったわ」

皮肉たっぷりなその言い方をされ、クリスティーヌは凹むところか、全く気づいていない。
エリックはクリスティーヌのそんな無垢さがたまらなく好きだった。
それを自覚すると同時に、自分の醜さが嫌いになった。
何故もっと優しい言葉をかけれないのかと。

「何をこんなに買ってきたんだ」

「服と、アクセサリーと化粧品よ。見て、このドレス綺麗!」

クリスティーヌは紙袋から薄いベージュのドレスを取り出し、自分に合わせる。

「そんな物なら、私が買ってやるのに」

エリックはクリスティーヌの頬を撫でる。
クリスティーヌはにこりと笑う。

「それじゃあ意味が無いの」

「…意味が無い?私には意味がある」

エリックは少しだけ微笑み、クリスティーヌから離れた。

「…戻ってきて安心した。疲れただろう。ゆっくり休め。明日からは、厳しくいくぞ」

「待って、渡したいものがあるの」




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