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   ありったけの





えーあれがきっかけで大介はできるだけ手を繋ぐようにしてくれてるし、腕を組んでも体を強ばらせるものの振りほどくことはしなくなった。
単純に嬉しかった。これまでと比べるとだいぶ恋人らしくなった気がしたし。でも。でもね。

「…なんでやねんっ!」


勢い良く机の上にチューハイの缶を置いた。酔ってますよ。もちろん。


「あんたも相変わらずよねえ。ほーんとなんでこんなに続いてるのかわからないわ」
「…だって大介かっこいいもん。例えチキンでヘタレでもそこが大介のいいところだもん。それにすごく優しいし…」
「あーやめやめ!惚気話は他所でやって頂戴」
「惚気じゃないし…」


私は親友と宅飲みをしている。一ヶ月に一回のお約束の集まり。お互いの愚痴やら悩みやらをこぼしながら飲んで騒ぐ。
因みにここ数ヶ月、私の悩みや愚痴は基本的に大介のことであった。こと手を繋ぐことに関してずっと悩んでいたから、手を繋ぐのが普通になった時の喜びったらなかった。それからさらに数ヶ月たった今、私の悩みはまたすり替わった。


「ちゅーもなしかいな…!」


そう。あの帰り道でのキス以来一回もしてない。ていうかまずそれっぽい雰囲気にならない。さらに二人っきりで会うときがほぼない。大介休日は練習するか休むかどっちかだもんな。
…まあこれがわがままなのはわかってる。大介はもっと自分をレベルアップさせてチームに貢献しようと思っていることも。私だってETUのスタッフ。大介の成長がETUの躍進に繋がるならそれはとてもいいことだ。わかってる…はずなんだけどなあ。
急に黙り込んだ私を心配してくれたのか、柚布子が無言でチューハイの缶を差し出した。そのさりげない優しさに感謝しながらゴクリと一口飲む。あーうまい。


「…椿君の性格からしてみればね…でもそれだけ大事にされてるってことじゃないの。そう気落ちしないの」
「うん…そうだね」


そう言いながら無理やり自分を納得させる。大丈夫。大介の性格は分かっている。いつかきっとしてくれる日が来る。……来るよね?ちょっと弱気になりながら、酒盛りは夜中まで続いた。




調子の乗って深夜というより早朝4時まで酒盛りをしていた結果、二日酔い。アホすぎるよ自分。ふらつく足に活をいれ、酷く痛む頭のために薬を飲んだ。吐き気がないだけまだましか。
ふーっと一息付きながらキーボードを叩く。ETUのホームページの編集なう、だ。因みに今回の特集は大介。なんかテンション上がる。カタカタと軽快な音を立てながら文字を打ち込んでいく。いやーほかの選手より長くなりそうな予感がする…「あ、名前さん、今回の特集椿君でも贔屓目なしでお願いしますねー」「はーい…」
有里ちゃんには見抜かれてました。

そして時間はあっという間に過ぎ、私は帰宅。大介はグラウンドで残って練習している。最近は特にそれが多いから、一緒に帰ることも少なくなった。…いや寂しいなんて思っていませんよ?いちゃこらしたいなんて思って…思ってるよ!大介が不足してる…もうこの際手でもいいからとりあえず触りたい。あ、なんか今私変態っぽくない?
一人床の上で悶絶しているとピンポーンと軽快な音が鳴った。誰だろう。急いで玄関へ向かい、穴をそっとのぞく。覗いた先には息を切らした大介がいた。…大介!?
勢い良くドアを開けるとゴンっと大きな音が響きわたった。


「っ痛!」
「ああああ、ご、ごめん大介!大丈夫?」
「うは、い。大丈夫す…」
「とりあえず上がって!」


焦りすぎてドアを思いっきり大介の頭に当ててしまった。本人は大丈夫と言ってるけど、念のため上がってもらう。
ぶつかったところをさすってみるとたんこぶが出来ていたから、冷えピタを貼って冷やす。


「ほんっとにごめんね…」
「いや俺石頭なんでほんと…」


申し訳ない気持ちで一杯になりながらも、久しぶりに二人っきりで心はウキウキしている。


「ところでどうしたの?こんな夜遅くに」
「あ、すいません。こんな時間に尋ねるの失礼かと思ったんすけど」
「けど?」
「…名前さんに、会いたくて…二人っきりで」


そう言って真っ赤になった大介。でも多分、私も負けないくらい真っ赤だ。ていうか心拍数が異常だよ今。


「…私も、大介と久しぶりに二人っきりになれて、嬉しい」


素直にそういうと、椿はさらに顔を真っ赤にさせた。そんな姿が愛おしくて、勢いで抱きついた。というより押し倒した。ひっぺがされることを覚悟していた。でも大介は一瞬体を強ばらせはしたものの、両手がそっと背中に回された。驚いたけど、それ以上に嬉しくて、ぎゅっと抱きしめる力を強めた。
そっと顔を上げると、大介と目があった。あ、今、そういう雰囲気じゃない?もうやけっぱちだ。私は覚悟を決めて目を閉じた。息を呑む音が聞こえた気がする。そしてそっと柔らかいものが唇にあたった。ほんの一瞬だったけどすごく幸せなキスだった。そっと目を開けると大介と目があった。それがなんだか気恥しくて、それでもなんだか逸らせなくて、最終的にお互いに笑いあった。


Kiss Kiss Kiss !


そしてもう一度、そっと唇を合わせた。



「大介真っ赤…」
「う…」
「かーわいっ」
ちゅ
「〜っ!」



++++++
麻衣さんのリクエストで、繋いだ手の暖かさ続編でした。
バカップルを目指しました。…いっそシリーズ化しちゃおうか(
リクエストを受けてからものすごく時間が経ってしまい、申し訳ないです…
ほのぼの甘…みたいな感じに仕上げました。リクエストに添えていますでしょうか。

何はともあれリクエストありがとうございました!
これからも朗月をよろしくお願いします^^
!麻衣さんのみお持ち帰り可です





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