君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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行く前に虚しいような悲しいような気持ちになったけど、いざ買い物に出てみれば単純なもので、気持ちはすぐに目先のものに移った。まず食料品を買って、その後ご飯を食べて、のんびりショップを巡り歩く。久しぶりのゆっくりした買い物になんだか心ものんびり落ち着いてきた気がするなあ。あ、これ可愛い。









映画館もあったから覗いてみれば、ちょうど好きな映画のリバイバルがやっていたから折角だったから観ることにした。のはよかったけど、そういえばこの映画はなかなか長い映画だったのを忘れていた。のんびり回っていたのもあって、時間は0時を回っている。そろそろ帰ろうかと思ってまたふと思い出した。そうだ、吉田さんはデートしてたんだ。携帯を見ればメッセージは入っていない。吉田さんは女の人を家に呼ぶときは教えてくれてた。ないっていうことは…呼んでないのかな?うーんでもなあ…。なんて悩みながら運転していたらあっという間にマンションについてしまった。駐車場に車を停めれば、当たり前のように吉田さんの愛車のマセラティが鎮座している。これで家にいるのはわかった。だけど問題は家にいる人なわけで。とりあえず買った食料品のうち、冷蔵・冷凍ものだけ持って部屋へ向かい、ドアを軽く引けば鍵はかかっていない。お、と内心喜んだのはつかの間で、ドアを開けた先にあったのは吉田さんの靴と可愛らしい花のついたパステルピンクのパンプス。そしてリビングから聞こえる可愛らしい女の子の声。これはため息がでてもしょうがないと思うんだ、うん。ふぅと一息ついたあとに細心の注意を払ってドアを閉め、抜き足差し足忍び足でキッチンまで行き、食料品を片付け、そして来た時と同じようにそっと家をあとにした。そして車に戻り、携帯で一泊泊まれるホテルを探していると、途中で画面が揺らいだ。あれ、と思った時には目からなにかがぽたりと落ちた。なにかが落ちたスカートには小さなしみができていて、同じようなものがあとからあとからできていった。目に手をやれば何かで濡れている。そうか、わたし泣いてるのか。泣いていると気づくまでは変に冷静だったけど、自覚してみれば涙が更に溢れてきた。そしてなんとも言えない悲しさがどっと押し寄せてきた。
わかっていたつもりだった。彼が魅力のある人で、手招く人はたくさんいることも、わたしが彼の好みからかけ離れていることも全部全部わかったつもりで、でも結局わたしはその事実から逃げていただけだったんだ。気持ちに気づいた時は、一緒に過ごすことが出来るだけでいいと思っていた。しょうがないと諦めたふりをしていた。でも結局は。






諦めきれない上に、好きすぎて、どうしようもない所まで来てるんだ。でも、わたし結構諦め悪かったんだなーなんてふと思ったら、なんか笑えてきちゃった。涙を拭いて、鏡を見ればひどい顔で笑っている私がいた。
ここまで認めて、やっとスタートラインに立てた気がする。目は赤くなっていたのでどうにかメイクでごまかして、ホテル探しを再開した。



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次はジーノの巻
14.10.17一部改訂


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