君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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久しぶりに引っ張り出したゲームをやり始めたら予想以上にのめり込んでしまい、ふと時計を見れば六時をまわっていた。今くらいならそんなに混んでもだろうし、ちょうどいいかも。ゲームをきりのいい所で終わらせて軽くメイクをして、玄関まで来てふと考えた。もし吉田さんが今日のデート相手と家に帰ってきたらどうしよう。言われてないけど可能性がないわけじゃないし。鉢合わせになるのもやだし、一応どこかに泊まる用意もしとくか。…なんだかここまで考えちゃう自分が悲しい。








佳奈が気になり始めたのはいつだったかな…。最初に会った時の印象は地味な子、だった。ミッチーの姪だというから、少し期待をしてたけど、ミッチーみたいに華やかじゃないし、僕の回りにいる女の子とは全然違ったし、僕の好みじゃなかったし、興味すら湧かなかった。一緒に住むということも、別に僕の邪魔をしないでくれるならそれでよかった。ハウスキーパーみたいなこともやってくれるし。女の子は家で佳奈を見た時、最初は怪訝な顔もするけどすぐに勝ち誇った顔に変わる。佳奈も最初は女の子を呼ぶ度戸惑っていたようだけど、女の子を呼ぶことを先に伝えるようにしたら、その時はあまり姿を見せないようにした。女の子には佳奈を見るとたまに嫉妬しちゃう子がいたんだよね。機嫌を取るのも楽しいけど、それが面倒くさくなっちゃう時もあるし、しないにこしたことはないから、彼女の行動はよかった。
ある日バッキーたちが佳奈の話をした時に、胸が苦しくなった。あの時はなにかの病気かな、なんてとぼけたりしたけど、嫉妬したんだ、バッキーに。僕の知らない佳奈を知ってるんだと思って。嫉妬なんて今までしたことなかった。昔から望めば何でも手に入った。物も人も何でも。嫉妬なんて言葉さえ無縁だった僕が、なんて認めたくなかったのかもしれない。でも認めればなんだか嬉しくなってきた。僕にもこんな感情あったんだって。新しい自分を見つけた感じ。なんだか子どもみたいだな。
佳奈がどこでバッキーたちと知り合ったのはわからないけど、それがきっかけでサッカーに興味を持ったみたいで、ETUの練習や試合で見かけるようになった。本人はバレてないと思ってたみたいで、それがちょっとおもしろかったな。ともあれそのおかげで佳奈ともサッカーの話をするようになって、それから今までよりもっといろんなことを話すようになった。そしたら佳奈の笑顔が増えてきて、それが妙に胸に残ってドキドキして、こんな気持も初めてだったし、そもそも人を好きになる事自体が初めてだった。女の子の扱いには慣れてるつもりだったけど、佳奈への接し方は日に日にわからなくなるばかりだった。それになんだかもやもやして、どうしようもなくて、久しぶりに女の子と遊ぶことにした。息抜きにでもなればいいけど。



「ジーノ!」
「なんだい、可愛い人」

そう言って微笑みかければ、可憐に頬を染める女の子。甘えるように腕を絡めてくる彼女を見ながら、心はなんだか冷めていた






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珍しくジーノ視点


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