君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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前の合コンから椿君に懐かれた。その時メアド交換したんだけども、めっちゃメールくる。練習のときザキさんに叱られたとか、世良さんとモンハンやったとか、監督に犬って言われたとかいろいろ。…何だか今日あったことを逐一報告する幼稚園児みたいだ。そしてそのメールにいちいち返信する私は母親といったところだろうか。…いや姉だな。母親はまだ早い、うん

そんなわけで私と椿君の関係は、姉弟のようなものになってきた。練習や試合をできるだけ見に行くようになったし、椿君のレプリカユニフォームを吉田さんに内緒でこっそり買い、見に行けなかった試合は録画をしておき、夜中にこっそり見ている。…吉田さんにばれたらなにかしら言われそうだし。『バッキーのファンになっちゃたのかい?へぇー佳奈は年下が好みなんだね』とか。…想像できてしまう自分が怖い




「佳奈ーご飯まだー?」
「はーい!今行きますー」


噂をすれば影。呼ばれたリビングへ向かうとくつろぎつつも、お腹が空いたのか眉を八の字にしている吉田さんがいた


「今日は何?」
「えーとミネストローネとシーフードドリアですよ。あとシーザーサラダ」
「へぇ美味しそうだね」


いただきますを合図にお互い黙々と食べ始める。吉田さんは基本は静かに食べる方だけど、練習とかで面白いことがあったりすると話してくれる


「そういえば今日シュート練習があったんだけど、タッツミーがバッキーにかなりプレッシャーかけて、バッキー三回も空振りしたんだよ」

アハハと笑いながら話す様子に私も笑い返す。あー確かメールにもそんなこと書いてあったな。『王子にものすごく笑われました』って。よほど面白かったんだろう、まだ笑い続けている。そしてその様子が簡単に想像できてしまう私はブラコンか。椿くんが弟なら仕方ない(血のつながった弟は可愛げがないし)


「椿君のこと、気に入ってるんですね」

そう言うと、「そうだねぇ…」とつぶやき、食後の紅茶を飲んで一息ついた。

「バッキーは可能性に満ち溢れている…というのかな。まだ若いしね。これからが楽しみなんだよ」



そう話す彼の顔はどことなく嬉しそうだった。そういえば吉田さんってってベテラン…の域になるんのかな。こういう話しているときが一番いい顔してるかも。なんだかんだでサッカー好きなんだろうなぁ、なんだか嬉しさを感じた。そんなわたしもサッカーの面白さにはまってきたかも


吉田さんと暮らし始めてずいぶん経つけど、まあ彼女さんをコロコロ変えたり、遠慮せずイチャコラするところを除けば、彼は基本、女性に優しい。一緒に買い物に行くとさりげなく荷物持ってくれるし、車に乗るときは先にドアを開けてくれるし。家でも基本レディファースト。ううむ、さすがイタリアの男(ハーフだっけ?)
夕食の片付けを終えリビングに戻ると、吉田さんがテレビを見ていた。一昨日のETUの試合だ。確かこの試合、吉田さんのゴールが決勝点になって勝ったはず。少し離れてソファーに座り、その試合を一緒に観る。確かこれ椿君がアシストしてたんだよねー



『ゴォォォル!ETUダメ押しの3点目っ!』


「いよっしっ!」

思わず声をあげてしまった。直ぐに口に手を当てるが、吉田さんはこっち見てるしもう遅い。あはは…と苦笑いでごまかし、視線をテレビに向ける。吉田さんの周りに皆が集まっていて、その中に椿君がいた。あ、クロさんに叩かれてる。吉田さんとハイタッチ。椿君嬉しそうだ。自然と口角が上がってしまう


「佳奈…なんだか嬉しそうだね」
「…そ、そうですかね」

急に話しかけられて、思わずどもってしまった。いかん、平常心。



「佳奈、最近練習とか試合によく見かけるね。ETUに興味あるの?」
「あー…まあそんな感じです…」



なぜばれてるんだ。練習はともかく試合なんて!あんなにいる人の中から私を見つけるって…。そこまで考えて顔が熱くなってきた
正直最初は苦手だったけど、慣れればどうってことないし、見た目はこの通りだし、中身は…紳士的なところだけ見れば、彼はかなりかっこいい。ドキッとした場面がなかったとは言わない
大勢の中から一人を見つけるなんて展開、少女漫画とかでしか見ないと思ってた。吉田さんもちょっとは私を恋愛的な目で見ててくれてるのかな…ってこれじゃ私が吉田さん好きみたい!いや、違う!断固として!
でも結構こっそり行動してたつもりなんだけどなあ…



「…もしかして





僕に惚れちゃった?」





…そうだ…この人はこういう人だった。僕って罪な男だね〜と言いながら笑う吉田さんを見て頭に手を当てる。頭痛い
違いますからね!と念を押して言い、「お風呂先に頂きます!」と言い訳をしてその場を離れた



…シュートを決めたときは格好いいと思ったのに。



がっかりだよ!



でもやっぱりかっこよかったですちくしょう
イケメンのばかやろう





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