君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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「やだジーノったら…」
「女性に優しくするのは男として当然さ」

リビングからは美男美女の優雅な談笑が聞こえてくる。美女は勿論吉田さん(ジーノか王子と呼ぶように言われたけど、何だか癪に障るので、心の中では吉田さんと呼ぶことにした)の彼女だ。…多分。というのも、私がこの家に来てから吉田さんが連れてきた女性は彼女で3人目。共通点はモデル並みに足長い、スレンダー、おっぱい星人。顔がいいのは当たり前か(と納得してしまうのが何か悔しい)一週間のペースでコロコロ変わる。今いる彼女も、以前来た女性たちも、私を見るなり口の端を上につり上げ(ここが何ともむかつく)吉田さんの腕にこれ見よがしにしがみつき、「ねぇジーノ、早く行きましょ」と甘ったるい声でリビングへ誘う。入る前に、勝ち誇った顔で私を見るのを忘れずに

あれか、喧嘩売られてるのか私は。あんたみたいな女より、私の方がジーノにふさわしくってよ!
みたいな?(想像)

…口喧嘩なら負けないし、なんてよくわからない負け惜しみを心のなかでこぼしつつ、洗い物を片付けていく。見下されているようで腹はたつけど、一応居候の身としては家主のプライベートに文句はつけられない。彼女が家にくる時、事前に伝えてくれる所だけが唯一の救いなのである。最初の頃はそれこそお邪魔をしないようにと、彼女が来そうな時間は席を外すこともあった。駄菓子菓子。来る頻度はしょっちゅうだったり、そうでもなかったり。相性が良いようだと泊まってったりする。ネカフェで時間を潰すのにも限界というものがあるわけだ
一度思い切ってしれっと家に残ってみたら、私の存在は空気のようにスルーされた。内心ドキドキだった私のハートは一瞬にして崩れ去った。それからは図太さを増し、堂々と家にいることにした。結局彼らにとって私がいようがいまいがどうでもいいわけだ
そっちのほうが私としても助かる…けどなんだかなあ。はぁと溜め息をつき、止まっていた洗い物に手を付けた





洗い物も終わり、さあ仕事をしようと意気込んだ矢先、2人がリビングからでてきた。おーっとこれはバッドタイミングだ、羽村選手!とすっとぼけてみるが、現実は厳しい。リビングには食器が残ったままだろう。終わったばかりの洗い物をもう一度することになり少しげんなりとしている私にはお構いなしに、2人は薄暗い吉田さんの部屋へ入っていった。たびたびあることだけど、こればっかりはいつまでたっても慣れない。慣れたくもないけど!しかし私に遠慮するとか全然無いな。知ってたけど!ラブホ行きやがれリア充ども。と口が裂けても言えない悪態をつきながら私は鞄の中からウォークマンを取り出し、音量を耳が痛くならない程度で最大上げ、イヤフォンを耳につけた。そうでもしないと聞きたくも無い声が否応無く聞こえてくる。女の喘ぎ声を聞いたって嬉しくない。それでも稀に聞こえてくる声に眉を寄せながらリビングの片付けに向かった




選択を誤った ?



まじでラブなホテルに行って下さいな





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