君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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ルイジ吉田。愛称はジーノ、若しくは王子。ETUに所属するサッカー選手でポジションはMF、背番号は10番。
私は今この男の家に住んでいる…。




今から2週間くらい前、嬉しいことに今までの働きが認められて、地方の支店から東京の本社へ配属が決まった。でも大きな問題が一つあった。「家」だ。
本社は東京の一等地にあり、その周辺ではマンションなどの相場も高く、私の給料ではとてもじゃないが借りれない。郊外なら少しは安くなるだろうが、その場合通勤は電車になる(本当は車で通勤したいが、渋滞に巻き込まれる可能性が高いし)
車社会で育った私はなんとなく電車が苦手だった。特に朝のラッシュなんてものはそうなんども経験していないし、できれば避けたいものだ。だからといって住む場所と通勤手段、どちらを優先すべきかは明白だ…けども

「うーん…」

そんなこんなで悩み続けて早3日。わたしは叔母を頼むことにした。叔母は会社を持っており、人懐っこい性格からか顔も広い。この際訳あり物件でも多少は目を瞑る。いや、多少とは言わず目を瞑りたい
心配なことは叔母の性格…訳ありだけで収まってくれることを祈りながら、母を通して数年ぶりに叔母と連絡をとった。叔母は快く了承してくれ、私に一つの物件を紹介してくれた
本社まで歩いて10分もかからない高級マンション。そう、ここだ。



「佳奈の会社まで歩いてもいけちゃうわよ!まぁ住み込みって言う形になっちゃうけど」



あ、彼がここの主のジーノよ。と叔母は彼を紹介した。「ハァイ。僕のことは王子って呼んでね」という彼からは…なんかでてる…フェロモンか?
私はそんな彼にに見覚えがあった。東京に住んでいる友人がことあるごとに言っていた、ETU---East Tokyo Unitedというサッカーチームの10番王子の愛称で呼ばれるルイジ吉田その人だった
実を言うと私は彼のキザでナルシストなところがちょっと苦手だった。苦手意識を持っている人と同居なんて出来るのか、なんて的はずれなことを考えつつも、本社まで10分という好条件に内心はラッキーだなんて思ってしまった。一番大きな問題から目を背けていた、ともいう



よく知らない男と同居かい



よく知らないって言ってもちょっとは知っているんだけれども(友人のおかげで一方的に)
それより吉田さん彼女いないのか?いたとして、彼女は見ず知らずの女が彼氏の家に泊まることに対して何も思わないのか?
疑問に思ったことが顔に出ていたのか、吉田さんは素晴らしい笑顔でこう言いのけた



「あぁ大丈夫。君は僕のタイプからかけ離れているからね!」



私の中の彼の評価はこの一言で地獄の底まで落ちた。



くたばれこの下睫毛野郎。



「佳奈ー、ご飯まだかーい?」
「…すいませんあとちょっとです」

家賃は家事全般になりました。



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