君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



   ある女性の





月曜日。残業のせいで少し遅くなった夜八時半。疲れていて体力も使い果たしたからのんびり自転車をこぎながら帰っていた。閑静な住宅街を抜け、大通りへ出る。犬の散歩やジョギングをしている人がちらほらいる中、一人ぼけーっとしながら自転車をこいでいた。夕ご飯はなににしよう…そんなことを考えていると、前からすごい速さで誰かが走ってきて、すぐ横を通り去った。びっくりして思わず止まって二度見してしまった。遠ざかっていく赤と黒のジャージの背中をみて、あんなに飛ばしてもつのかなあと思いながら今日の夕ご飯は鶏だんごにしようと決めた。

火曜日。定時通りにあがれたから、本屋に寄って欲しかった本を買った。近くのカフェで一息ついてから少し本を読んだ。少しのつもりだったけどついつい読みすぎてしまった。今日は本読みたいし、夕ご飯は外で食べよう。そう思って家の近くの定食屋に自転車を走らせた。
馴染みの定食屋でハンバーグを平らげ、自転車に乗って帰宅。本を読み切って寝た。

水曜日。ちょっと早く出勤した分早く上がれたので、今日はちょっと凝った料理でもつくろうかと思い立った。すたこらさっさかと家に帰り、車に乗り換えて買い物へ向かった。意外に買い物が早く終わったので、ちょっと遠回りして帰ろうと行きとは違う道を進んだ。その途中でサッカーの練習場に通りかかった。なんだったかな…ETUっていうサッカーチームのなんかだった気がする。そういやあのボケが監督やってたな…そう思って少し車を止めて眺めてみた。そしたらあのバカが立っているのが見えた。そしてなんという偶然か目が合ってしまった。嫌な予感がしてとっとと帰ろうとしたらコンコンと窓から音がした。見れば爽やかな笑顔の後藤がいた。そして後藤に捕まり、なぜかハゲのご飯を作る羽目になり、最悪だった。ついでに後藤からETUの紹介があり、愚痴を聞き、なぜかレプリカユニフォームとタオルマフラー、次のホーム戦のチケットを貰い、絶対来てくれ!と頼まれた。そして帰った。疲れた。そういや赤と黒ってどっかでみたな。

木曜日。昨日もらったチケットの試合は今週の日曜だった。多少の知識くらいはつけといたほうがいいだろうかと思って、仕事の合間にパソコンでETUについて調べてみた。暗記には自信があったから、ついでに選手の名前も覚えてみた。
帰り道、今日の夕ご飯はなににしようかと考えていると、赤と黒のジャージが視界に入り、なんとなく立ち止まった。そういえば月曜に足が速い人とすれ違ったことを思い出し、ついでにその人が赤と黒のジャージだったことを思い出した。そしてそのジャージがETUの選手が着ていたものに似ているのも思い出した。選手だったのか、それじゃ足が速かったのも納得できる。足が速くて、黒髪の短髪。…椿大介選手かな。昨日まぬけが期待してるって言ってた子かーとぼんやり思っていると、椿選手は急に自分のほっぺたを叩いた。どうしたのかとおもったら、「もっと頑張らなきゃ…!」とつぶやいてまた走り始めた。…若いっていいな。

金曜日。後藤から電話があり、またETUのクラブハウスとやらに足を運んだ。あの野郎の夕ご飯をつくり、また後藤の愚痴を聞いた。その途中でドアをノックする音が聞こえた。椿選手だった。私をみてびっくりした顔をした。確かにわたし関係者でもなんでもないからなー。お邪魔かなと思って「今日はもう帰るわーまたね後藤とハゲ」と言って腰を上げた。椿選手はなぜかびくびくしながらすいませんって謝ってた。なんで謝るのかなーと思いながら「こちらこそ〜頑張りすぎないように頑張ってくださいね。応援してます」と言ってその場をあとにした。あとのメールで後藤に「頑張りすぎないように頑張るってなんだそりゃ」って笑われた。だって彼もう十分頑張ってると思うし。ちょっと気になって散歩がてらにいつもの道を自転車で走れば、彼も走っていた。ちょっと余計なお世話な気がしたけど、自販機でスポーツドリンクを買ってみた。そいで後ろから「椿選手ー」って呼んだらものすごい肩をびくっとさせて振り向いた。驚かせちゃったか。そのことについて謝って、「お疲れ様です。余計なお世話かと思ったんですけどこれ」と言ってさっきのスポーツドリンクを差し出した。そしたらなぜか赤くなって「あ、あああああありがとうございます!」と言いながら受け取ってくれた。「それじゃ、お邪魔してすみません」と言ってその場をあとにした。彼がそのスポーツドリンクを嬉しそうに飲んでいたなんて知らなかった。

土曜日。ETUの公開練習が午前中にあるようなので見に行った。いろんな人が見に来ていて、女性もそこそこいた。そういえばわりとイケメンが多かった気がするな。そう思いながら空いてるスペースを探し出し、練習を見た。あ、椿選手だ。やっぱり足速いなー。犬みたいだなー。犬種はなんだろう…と本人に大変失礼ながらそんなことを考えていると椿選手と目があった。気がしたのでちょっと手を振ってみた。そしたらなんか赤くなってこけた。だいじょぶかな〜と思っていると、近くの若いお姉さんたちがかわい〜って悶えてた。心配はしないのか。

日曜日。試合の日になった。貰ったユニフォームとタオルマフラーを身につけ、スタジアムへ足を向けた。久々の試合は熱かった。あのまぬけが選手を辞めてからは全然だったからなー。椿選手もよく走ってたなー。やっぱ犬だな。





それから道端で会ったら少し話すようになって、メルアドを聞かれ、いろいろあって告白され付き合ってる。びっくりだね。






***************

変換が一個もなくてびっくりだよ
タッツミーのいとこなヒロイン


← / →


目次

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -