神様どうか
気が付いた時には、自然と目で追うようになっていた。
視界に彼女が映り込むたびに、心の隅っこが熱を持つ。
網膜が彼女の姿を捉えると、甘やかな気持ちが全身を覆うように感じられた。
思ったよりも頼りない手、微笑むとスッと細くなる瞳。
さくらんぼを溶かしたような唇。
その全てが俺の心臓に不整脈を起こす。
言葉を交わせた日は不思議と調子がいい。
姿すらも目に出来なかった時は馬鹿みたいにミスが多くて、王子を不機嫌にしてしまう。
自分でもなんて現金なんだろうと思うけれど、それ程に彼女の存在は俺の中で膨らんでいる。
「椿くん」
「はっ、はいっ!」
「やだ、そんなに畏まらないでよ」
驚いて肩をビクつかせた俺の反応が可笑しかったのか、彼女はクスクス笑いながら手紙らしきものを差し出した。
「え、これって…?」
「サポーターからの手紙だよ」
よかったね!と手放しで喜ぶ姿に、ほわりと胸が熱くなる。
「あっ、ありがとうございます!」
「どういたしまして。しっかし皆やっと椿くんの凄さがわかって来たのね!」
私はずっとわかってたんだから!と胸を張った後に、なんてね!とおどけて見せる姿が愛おしい。
手を伸ばせば触れられる
神様、この気持ちを伝えることなんてチキンな俺には到底できやしないだろうけど、でも、決心がつくまではこうして笑い合う事を許して下さい。
受け取った手紙をギュッと握り締めて、俺はこっそりとそう祈った。
神様どうか
(ささやかな願いを叶えて)
+++++++
ななかさんからいただきました。
椿かわいいよ椿←
これからも仲良くしてくださいね〜^^
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