唇から
「恭ちゃーん!」
振り向くと佳奈が手を振りながらこっちに向かって走ってきていた。転ばないかな、とハラハラしながらおーっ、と手を振り返す。俺も駆け寄りながら距離を縮めていく。あと10mくらいだろうか。これなら大丈夫だろう、と安心した瞬間、
「あっ」
「あ!」
何もないところで佳奈はこけた。俺は急いで駆け寄り、手を貸す。もうこの行為もずいぶん手馴れたものになった。
俺と佳奈は母親同士が幼馴染という、少女漫画の設定にありそうな関係だ。赤ん坊の頃からずっと兄弟のように一緒に生きてきた。佳奈はどうにも不幸な体質みたいだった。さっきみたいに何もないところで転んだり、溝におちたり、上からものが落ちてきたなどなど。そのせいでよくいじめられたりしたが、俺はそんな奴らからずっと佳奈を守ってきた。それは兄が妹を守るようなものだと思ってきたけど、それはいつの間にか恋に変わっていた。そして高三の夏、佳奈に告白。見事俺の恋は実り、プロ選手になった今でもラブラブだ!…ちょっと表現古いか?その上佳奈は頑張って勉強してETUのフロントに入ってくれた。もうさすが俺の彼女!好きだー!
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう恭ちゃん」
にこりと笑う佳奈に俺も笑いを返した。
その頃ETUクラブハウス前
「あ、おっちょこちょいーずだ!ほらほら丹波」
「おーおーあいつらほんといつ見ても微笑ましいよなー。なんか和まねぇ?」
「わかるわかる!でもよーやっぱり佳奈ちゃんのどじっぷりを世良がカバーしてる…ようで実は出来てなかったりするとこがある意味一番微笑ましいよなー!」
「確かに!」
「お前ら馬鹿な話してないで練習行くぞ」
「はーい堺ママー」
「はーい」
「気色わりいからやめろ!」
佳奈の不幸っぷりもさることながら、世良のおっちょこちょいな部分も負けてはいない。そんなカップルの様子からETUの選手たちが彼らを『おっちょこちょいーず』と呼んでいるのはここだけの秘密である。
+++++++
今日も無事練習が終わり、いつものように佳奈を家まで送っていく。家と言ってもクラブハウス近くのマンションだからそんなに距離はない。20分も歩けばもう着いてしまった。まだまだ話したいことはあるけど、俺は早めに帰らないと夕食を食いっぱぐれてしまう。
「それじゃ…また明日ね、恭ちゃん」
佳奈は決まってそう言いながら少し寂しそうな表情をする。最近は大阪戦のためにずっと特訓してた。それに俺フィジカル弱いのわかってたから、休みの日も無理しない程度に体鍛えたりしてて、デートとかそういうの全くしていない。佳奈は俺に気を使ってくれてそういうことを口に出したりはしない。時折見せる寂しそうな表情も気づいていて何もしてやれてない。そんな自分が不甲斐なくて、殴りたくなった。
「…恭ちゃん?どうかした?」
佳奈に呼ばれてはっと上をむいた。知らぬまにうつむいて考え込んでしまった。大丈夫だ、というと佳奈は変な恭ちゃん、と笑った。ああ、その笑顔が好きなんだ。寂しい顔なんて、させたく、ないんだ。そう思ったら自然と腕が動いた。
ぐいっと佳奈の腕をつかんで自分の方へ引き寄せ、思い切り抱きしめた。
「佳奈…ごめんな…」
聞こえないくらいの声で言ったけど、佳奈には聞こえていたようだ。腕がそっと背中に回された。
「なんで謝るの?私毎日恭ちゃんの顔見れるだけで幸せだよ。
…本当のこと言えばね、ちょっと寂しいし、デートとかしたい。でもね、私恭ちゃんがサッカーしている姿が一番好きなの。見てるだけで元気になれるんだー。だからね、」
そんなこと言わないで。
そう言った佳奈をもっと強く抱きしめた。佳奈の方が俺よりも男前じゃんか。カッコわりぃ…
「佳奈…俺すっげえ頼りないし、チビだし、寂しい思いさせるし、だめ彼氏かもしんねぇ。けど…」
口下手な俺はそこまでしか言葉にできなかった。残りの思いを込めて、佳奈の唇にキスをした。
伝わる言の葉は。( 愛 し て る )
そのあとお互い顔を真っ赤にして突っ立ってたそうです。
ちかさんに捧げる!
リク受けてから半年くらい立ちました。
すいませんちょっくらヒマラヤからバンジージャンプしてきます。命綱なしで
いやもう遅すぎますね、すみませんほんとorz
しかも男前な世良…どちらかというとへたれ気味になってしまった感が否めないのですが…orz
ちなみに世良は寮に入っている設定で書きました。若手だし…そうかなあと(適当ですはい)
よろしければもらってやってください\(^o^)/
そしてなんかもうなんども言っているような気がしますが、これからも玖由良と仲良くしてやって頂けたら非常に嬉しいです^^
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