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だが、予想した衝撃がこない。
何故だ、と、目を開けば、動きを止めたネメシスが、よくわからないおっさんの隣に立っている。
誰だあのおっさん。
なかなかのダンディー加減ではあるものの、私には見覚えがない。
何か喋っているようだが、理解が追いつかず、ふらり、視界が揺れる。
倒れた体を、起こすことはできそうにない。
泥のように眠る、って略したら泥眠?
ふと、さっきダンディーなおっさんが言っていたことを思い出す。
結果的に、つまり、纏めたら、「ディレック・C・シモンズ、ただの大統領補佐官さ」ってことでいいの?
や、某名探偵仕様なのは、気にしないで頂けると助かる。
目の前で、自分の野望だかなんだかを語ってくれている彼には悪いが、興味はない。
っていうか、ネメシス退けてくれ、精神的にダメージがヤバい。
とりあえず、黒幕が彼だってことは確実だろう。
大統領補佐官だからこそ、簡単に大統領の娘のスケジュール把握もできた。
実は、アンブレラとも関わりがあった的なそんなオチで、権力もあったと。
正直に言っていい?
まるで、興味が湧かない、っていうか、殺意しか湧かない。
とは言っても、体がぴくりとも動かないので、どうすることもできない。
おっさんが、突然近寄ってきて、私を立たせる。
なんだ、と視線だけ動かせば、そこに彼らの姿があった。
クレアとルイスが非戦闘員4人(幼女とジョンと大統領の娘っ子)を守っている。
間に合ったのだろう、良かった、と口角をつり上げた。
「ヒサメ!」
名を呼ばれたのはわかったが、どうやら、耳がそろそろ使い物にならなくなってきたようだ。
おっさんが喋っているのは振動でわかる。
レオンが叫んでいたり、アリスが何かを言っているのも、口の動きでわかった。
おっさんが、後ろに歩き始める。
引きずられるようにしながらも、彼らの方を見た。
はかいを、
伝わるかわからないが、それだけを口にする。
ある程度離れていたから、伝わらないかもしれない、それでも。
牢の制御室に連れてこられ、椅子に座らされた。
扉の方を向かされている、ということは、きっと、彼らが来ることを予測しているのだろう。
何か背後で動いている気配はするものの、今の私には座っていることすら精一杯だ。
おっさんがご丁寧に、私の武器を外していく。
それが、終わったそのとき、視界の先にある扉が開かれる。
頭に、何か、押し付けられた。
きっと、銃か何かだろう。
扉の向こうにいたのは、レオンとジル、それから、アシュリーとクリスだった。