ナマモノ | ナノ


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ついた牢屋では、4人が待っていた。
1人は見たことがないが、多分、二人を元気づけてくれていたジョンという青年だろう。
…あれ?エイダの恋人って…まさか、ねぇ。

「ルイス、」
「ヒサメ?!大丈夫なのかよ、その怪我、」

意識が朦朧としてる、って別に眠い訳じゃない

その言葉に1つ頷くが、その反動で、ふらり、と体が揺れる。
一歩踏み出して、倒れるのを阻止しながら、レオンたちが向かっていることを告げた。
その中に、大統領の娘がいて、彼女にプラーガが撃たれていることも教える。
あと、見たことない黒髪の女の人もいる、と伝えておいた。
カプセルを、1つ、口にする。

「わかった、早く行こう。」

ルイスの言葉に笑って、シェリーとアンジェラの二人の頭を撫でる。
大丈夫、と掠れるような小さな声で言ってから、歩き始めた。
その、とき、だった。
背を向けている方から、何か音が聞こえる。
刀を構えて振り返れば、其処にいるのは、先ほどいなくなったのであろう、ネメシス。

「っ、行け!鍵のあった部屋を真っ直ぐだ。1人ずつ抱えて走れ!」
「だが!」
「レオンを、」

そう告げて、とにかく4人を逃がさなくては、と刀を握る手に力を込める。
なんとか、左手は動かないものか。
左手が使えないままでは、戦闘中の弾の補充ができない。
くそ、と一度、女の子としてあるまじきことを口にして、それでも、殆ど空になっているブーツを地面に押し付けた。
大丈夫、彼らは大丈夫。
だから私は、アレを抑えることだけ考えれば、それでいい。
一瞬にして間合いを詰めてきたそれに反応が遅れるが、直撃は免れる。
飛ばされる瞬間に一度、刀を振るえたのは、偶然だろう。
が、その一撃の所為で、怒りを増したりしたのか、こちらを見てきた、その存在。
恐怖は…ない。
きっと血が足りない所為だ。
意識がぼんやりと、それでも、感覚が研ぎすまされて。

『限界、ってことなのかしら。』

刀を支えに立ち、口元でだけ、笑う。
使えるはずの右手にすら力が入らない。
ガナードにならないだけ…まだましかな、と目を伏せた。

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