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扉に向かう途中、ルイスがでも、と声を漏らした。
その言葉を黙殺しようとしたが、残念ながら、アリスがそれに聞き返す。
「どうかしたの?」
「血清ひとつ、渡してあっただろ?」
思わず舌打ちした私は、きっと悪くない
沈黙が流れる。
さぁ、そうだったかな?
振り向くことなく、肩をすくめた。
誰かが壁を殴る。
音からして、多分、レオンだろう。
「…俺、に使ったのか。」
無言で居たところで、肯定にしかならない。
なら、理由を言ってやれば、いいかな?
「その方が、世界を救える可能性が高い。」
冷静に告げれば、誰かが息を飲んだ。
はあ、とため息を吐きながら、後ろを向いた。
そして、笑う。
「それに、その方が、未来に希望が持てる。」
何言ってんだよ、とでも言いたげな視線を向けられて、あー…と誤摩化すように声を上げる。
が、勿論そんなもんじゃ誤摩化されてくれないのは知っている。
少し、無言になって、深呼吸。
「私が、そうしたかったんだ。」
「そうしたかったって、なんで、」
ジルが泣きそうな表情をしたのを見て、申し訳なくなる。
だが、それでも、譲れないものは譲れないし、時間は刻一刻と短くなっていく。
「私が、レオンを撃ちたくなかった。…これでいいかい?」
「だから、何で一人で!」
レオンが眉を寄せて絞り出すように声を出す。
いやいや、わかるでしょうに、なんて思ってもそのままじゃ言えない。
一番綺麗に見えるように笑って、告げた。
「私はお前を殺したくない。その思いも、させたくはない。」
だから、さよならだ。
私の声は、部屋に響いた。