12
声をかけた途端に大きな瞳からぽろりと、涙を零して、私に抱きついてくるクレア。
びっくりしながらも、そんなに信頼されていた事実に更に驚く。
…が、よくよく考えれば、吊り橋効果っぽいものだよね?
シェリーが私の手を引く。
そちらを見れば、彼女が、はい、とジッポを差し出していた。
「ああ、ありがとう、シェリー。」
私の性別は女ではなく、お姉ちゃんだ
ジッポをしまい、この状況をどうにかしようと思いつく。
三方向を女の子に囲まれ、もう一方は壁。
かなり閉鎖的空間だ。
「私は大丈夫だから、ちゃんと座って。」
笑いかければ、渋々といったように自分の先ほど居た位置に戻る彼女たち。
ちなみに、シェリーはレオンとクレアの間に入ってもらった。
で、シェリーのいたところにジルが座る。
ブーツを履いて、立ち上がる。
操縦席の空いている方に座って、煙草が詰められた灰皿に苦笑した。
一本咥えて、煙草に火をつける。
一口だけ吸って、あとは前と同じように燃えていく様子を見た。
「独特だな。」
「かもね、味自体は好きじゃないんだ。」
煙草の火を見ながら、クリスの言葉に返す。
じりじりと焼けていくそれを見てから、最後もう一口だけ吸って、彼に笑いかけた。
「なら、何が好きなんだ?」
「強いて言うなら、短くなっていく様、かな?」
命を燃やして生きるなんて、格好いいじゃないか。
なんて、空を見ながら言ってみる。
不審そうな目を向けようとしてきたクリスに、ちゃんと前見て操縦しろよ、と告げて後ろに戻った。
帰れば、ジルが目を吊り上げている。
「ヒサメ、あれほど煙草はやめろって…!」
「ジルは女の子だもの、体壊すから煙草はだーめ。」
「…ヒサメは?」
「私は、女の子じゃないの、お姉ちゃんなの。家族はジルだけでいいよ。」
笑えば、ジルが泣きそうな目で、私を見てくる。
…言葉の選択ミスったっぽい。