旦那 | ナノ



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結果、私と宗くんは妖精さんになった。
ちなみに、悪い妖精が牧さんだ。
宮益さんはその悪い妖精さんがかけた魔法の効力を弱める妖精さん。
指を刺す原因の人は小菅さん。
父王とか男性キャラは基本的に3年生、そして、妖精とかの女性キャラは1年生。
例外は武藤さんの王妃だろう。
何を考えてそうされたのかわからない、と思っていれば、キャプテンがにやりと笑った。

「武藤、お前…先輩に気を取られて練習に集中してなかっただろ?だからだ。」
「う、うそだぁああ!!」

武藤さんは崩れ落ちた。
つまり、ここ最近の練習が厳しかったのは、気が緩むとかじゃなくて、ただ単に先輩達が女装したくないからだと。
真剣にやってますよ俺ら、だから女装は辞めて下さい、ってことだと。
なるほど、そんなことだったのか…。
はは、と思わず空笑いして、妖精さんか…とため息を吐く。
ああ、牧さんのやる妖精さんは女性のはずだが、用意されている服装が何故か燕尾服らしい。
燕尾服着た妖精さんって、それはもう妖精さんではないと思う。
なんて、誰もが思っても口出しはしない。
先輩達(主に歴代キャプテン)に楯突けるものなら、やってみろということだ。

「役を貰った人間は衣装合わせがあるから、この後集合な。あと、名前呼ばれなかったからって安心してる奴ら、お前らもう1つの方で確認されるから気をつけろよ。」

にっ、と笑ったキャプテンは異常な程に爽やかで、嬉しそうだった。


「…私、これ本気で着ないといけないんですか?」

私の衣装として渡されたそれは、純白のワンピース。
ついでに真っ白な、女優さんが被っていそうな帽子。
きっと、綺麗な人がこれを着て、花畑で微笑んだら絵になるだろう、セットだ。

「氷雨ちゃんはまだいいでしょ、俺これだよ?」

そう言って、宗くんが見せて来たのは、赤いドレス。
それから、ウィッグもセットになっているようで、黒くて艶やかなそれがあった。
どう考えても妖精さんってレベルじゃねーよ、どちらかって言ったら魔女だろ、これ。
なんて思って苦笑していると、後ろから恨めしそうな声が聞こえる。

「お前はロングだからいいだろうが。」
「…橘くん?」

橘くんの衣装はピンク色のワンピース。
膝丈で、ふわふわしている、ついでに茶色のウィッグ付き。
思わず、目を逸らす。
妖精さんっぽいと、それはそれでキツいのか、と知る。

「牧さん…は、燕尾服ですね、何処からどう見ても。」
「そうだな…一応、マントもついているが、妖精ではないな。」

ふむ、と顎に手を当てる牧さんはどう見ても吸血鬼だ。
断じて妖精ではない。

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