旦那 | ナノ



066
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「田岡センセー、」
「勝手にしろ。」

前半が終わり、ハーフタイムに入ったタイミング。
許可を貰った私は、ボールを持ってコートに入る。
リズム良くバウンドさせて、両手で3Pシュートを打った。
スパ、と音を立ててリングを通ったボールが地面に着く前に片手でキャッチ。
そのまま方向転換して反対側のリングを見つめる。
リズムを再生、先ほどの映像も同時に再生させつつ、動きを確かめた。
途中で存在していた相手を抜いて、シュートに向かう。
シュートに行くと見せかけて、彰くんにブロックされてパスに移行した彼の動き。
とん、と地面に足をつけた瞬間、跳ねさせてボールが遠くに行く前にキャッチ。
いい感じ、と思わず口元に笑みを浮かべる。
くる、振り返って、シュートを打つ。
バックボードにあたってリングを通ったそのボールを拾い、一本指をあげる。

「さあ、いこーか。」

リズムを変えた。
一気に反対側のゴールへ向かう。
そのまま、ディフェンスをかわし、フェイントも入れる。
残念ながらダンクは出来ないが、それに近づくために飛び上がることは出来る。
他にも越野君や魚住さん、ノリさん、木暮さんの動きを軽く確認。
後、行けて一本かな、と思っていれば、田岡先生の苦々しいような声。

「白雲、」
「じゃぁ、特別で一本だけ、行かせてもらいます。」

そりゃぁ、基本は敵のマネージャーだからねぇ。
自分のところのメンバーの動きを真似されてたら…。
そうもなりますよね。
ボールを持って、目を伏せる。
リズムを頭の中で再生させて、息を吐きながら、目を開いた。
視界に入るのは、向こう側のリングだけ。
力強いドリブルと容易なことでは止められないだろう。
特に、本家の方は。
想定されるディフェンスを抜き、バランスを崩しながらシュート。
すぱ、と音を立てたボールを拾い、フリースローラインに立つ。
一本、ワンハンドで冷静に決めて、音を立てるボールを拾った。

「これでチャラですよ、」

田岡先生に笑いかければ、ふむ、と顎に手を当てる。
え、その反応は予想外なんですけど。
もっと不満とかあるかと…まあ、言われないのはいいんだけどね。
なんて思うが、このまま此処にいるのは邪魔になってしまうので、ささっとよける。
疲れた、と私の鞄を見れば、既に開かれたそれからタオルと飲み物を取り出した。
多分、その椅子にあるのが、さっき彰くんが食べていたレモンの蜂蜜漬けのタッパで、鞄が開かれた理由だ。
汗を拭いていれば、近づいてきた彰くんがにっこりと笑う。

「氷雨ちゃん、今日の練習試合も入るんでしょ?」
「一応ね、何?やるの?」
「勿論、試合終わったら、よろしくね。」

ちゅ、とデコに唇を押当ててきた彰くんに色んな意味で絶望しながらも、はいはいとだけ頷いた。
体育館の中の女の子が悲鳴を上げたのなんて聞こえない。
ベンチから視線が刺さってきてるのも、私の勘違いで気のせいに違いないんだ。
頼むから、お願いだから。
さっさと終われこの試合…!

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