旦那 | ナノ



028
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「嫌じゃないならいいでしょ?」

と彼は言って、そのまま手を引かれる。
混乱によりショートした私の頭では何も考えられず、そのまま着いて行こうとする。
が、逆に引っぱられて、動けなくなった。
振り返れば、そこには先輩の姿が。

「先輩?」
「氷雨ちゃん、ソイツ手早いから気をつけなさい。」

にっこりと宗くんを指差す。
宗くんは引きつったように笑って、先輩を見た。

「塚本先輩に言われたくないなぁ…。」
「あれ?知り合い?初めましてって?え?」
「塚本先輩は俺のことが嫌いなんだよ。」
「アンタが私のこと嫌いなんでしょー?!」

…私を挟んで言い合いしないで欲しい。
困った、と辺りを見渡せば、目が合ったのは牧さん。
うん、無理。
此処に入ってこられて私が無事だとは思えない。
やはり此処は自分でどうにかしよう。

「先輩、」
「ん?」
「大丈夫です、宗くんにも選ぶ権利がありますから。」

音として現すなら、にへらとか、へらとかっていう力の抜ける笑み。
先輩が、唖然としたように私を見る。
それから快活に笑った。

「まさかの天然とか。」
「いやいや、真理ですって、人間にはレベルがあって、それが同じくらいの男女が付き合うそうですよ。」
「何それー?」
「何かの本で読みました、多分家にあると思いますけど、読みます?」

読みたければ探して持って来ますけど。
と首を傾げれば、いや、いい、何かめんどくさそう、と言う先輩。
酷い、めんどくさいとか…。
なんて思いながらも笑う。

「まあ、つまり言いたいのは、仲良くしましょうってことで。」
「…なんか違う気がするけど、まあいいわ。」

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