旦那 | ナノ



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電話を切って、はあああ、と深くため息をつく。
体調とメンタル、なんて言ってはいるが、内容としてはとても簡単だ。
夏休み気になることといえば?
そう、宿題だ。
特進クラスの宿題は多い。
通常クラスと推薦クラスについては多いわけではないが手間がかかる。
他には…登校日なんかはいいとして、体調については単純に熱中症とかそういうの。
練習中以外でも、監視はできないけど、注意喚起をする必要がある。
そして、夏休みの重要なことの一つに、思い出づくりがある。
学生は学生らしく、だが、部活と宿題に追われた夏休みだけでは、味気ない。
代々マネージャーが勝手にやっていることではあるのだが、例えば夏祭りにみんなで参加できるように日程を調整する、とか。
恋人のいる部員の邪魔にならない程度に、練習と宿題をこなす休みも残しつつ。
やること多くて頭痛い、と額を抑えた。

「にしても、氷雨、ちょっと来なさい」

リビングでリョーちゃんの勉強を見ながら、彩子は私に告げる。
唐突な発言にん?とそちらを見る。
呆れたような顔をして、彩子は私を手招きする。
招かれるまま近づくと、怖い顔をした彩子が、私の顔を睨みつけた。

「あんた、今何人待たせてんの?」
「なっ、」
「私が知らないとでも思ってたのかしら?」

ふふん、と自信満々に告げる彩子に降参、と両手をあげる。
逃がさないと言いたげに私の腕を掴んだ彩子は私を隣に座らせた。
他の皆さんは、興味がないのか、それとも勉強で必死なのか助けてくれそうにもない。
そもそも、この中の三井さんなんかはほとんど関わりがない相手だ。

「ほら、早々に白状した方がいいわよ?」
「……よにん」
「ん…?3人はわかるけど、後一人?誰なのよ?海南2人に陵南1人でしょ?」

ジリジリ、こちらに迫る彩子に、一瞬だけ赤い頭を見る。
ここで彼の友人のことについて勝手にバラすのは如何なものか、というか、どうして彩子は私の恋愛事情を知っているのか。
そう思って彩子に視線を戻す。
諦めることはないだろう、そうわかる顔をしていた。
観念して、正直に告げる。

「…洋平くん」
「ハァ?!洋平くん、ってあの水戸洋平!?桜木花道の友達の」
「そうですけど?!何あの驚異の年下怖いんだけど!」
「……あんたが逆ギレするほどのことがあったワケ?」

彩子にため息をつきながら頷く。
あのイケメンはやばいとしか言いようがない。
スパダリすぎる、怖い、ころっと転がされかねない相手だ。
そういうことを力説すると、彩子はウワァ、とドン引きした顔を私へと向けた。
他の皆さんの勉強が終わってから、彩子に詳しく色々聞き出される羽目になったが…その感覚も久しぶりで楽しかった。
とはいえ最後に、あんた何やったのよ、と言われたのは本当に心外である。
女同士あーでもないこーでもないと騒いだ後は、彩子と一緒に晴子ちゃんの部屋に泊めてもらった。

早朝起きて、昨日お邪魔した段階で許可を得ておいた朝ごはんを作り、晴子ちゃんとノリさんのお弁当を作り、メモを残してから赤木宅を出る。
そうそう到着したマンションでは彰くんも宗くんも、ちゃんと自分の部屋にいたから、とりあえずは許すことにした。

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