旦那 | ナノ



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さて、全国に出てきそうな学校を研究しながらの練習は終わりを告げた。
今日6月26日は陵南戦、そして明日6月27日が武里戦だ。
ドキドキとしながら、体育館へ向かう。
マネージャー陣は選手たちより前に来て準備をするのが常なのだが、今回は選手と一緒だ。
決勝リーグということもあるし、この間のこともあって、男マネの方達が俺たちが先に行くよ、と。

「白雲、行くぞー」
「あ、うん!ごめん、橘くん」

私に声をかけてくれた橘くんの方へ向かって小走りになったのだが、橘くんにたどり着く前に止められた。
がしり、と掴まれた腕にぱちりと瞬いて振り返る。
どことなく不安そうに見えるその顔に宗くんに首を傾げた。

「今日は、もちろん俺たちの応援でしょう?」
「私は海南大付属高校の男子バスケットボール部マネージャーだもの。それに、これでも海南の皆とIH優勝まで行くのが目標よ?」
「…ごめん」
「気にしてないよ。実際、陵南とは結構仲がいいもの」

苦笑して、申し訳なさそうな顔をしている宗くんの顔を見上げる。
そんな顔をされていて、勝てるものも勝てなかった、なんて事になっては困るので、その手をぐっと掴んで引っ張る。

「ほら、行こう?私も橘くんに呼ばれてる身なの」
「そうだったね」

若干嫌そうな顔だが、どこか持ち直した表情で橘くんの元まで向かう。
…ある程度持ち直したのならいいかな。
呆れたようにこちらを見ていた目的の人物は、手を招いて、私に二つのものを差し出す。
思わず首を傾げて、それをじっと見ると、どちらもスコア表だが、裏返してあり内容は見えない。

「好きな方を選んでいいぞ」
「え、なにそれ…超怖い」
「大丈夫だって、そんな恐ろしいことじゃねぇから」

笑いながらどっちがいいよ?と告げる橘くんをもう一度だけ見つめて、視線をスコア表に落とした。
適当に利き手を伸ばして、まっすぐ前にあるそれを取る。
ちらり、とひっくり返してみると、中央席用と書いてあり、橘くんの手元に残っているそのスコア表にはベンチと書いてあるのが見えてびっくりした。
橘くんの方へ視線を向けたら、彼はいたずらっぽく笑う。

「専業マネへの課題、らしい」
「え…どういうことなの?」
「ここ最近俺たちの仕事を推薦マネがやってくれてただろ?それで、ちょっとこっちの仕事もやってみてくれと言われた」

続けて、今日はドリンクの用意、弁当の手配、応援場所の様子見・準備、試合状況の撮影、相手チームへの挨拶等は全部任せるらしい。
その代わりに、練習場の準備、練習の手伝い、試合中のフォロー・スコア記入、ベンチ準備、会場に求められた場合の手伝いは私たちが中心になるのだそうだ。
今回だけでいいのか、と思わないでもないが、でもまあ、推薦マネがそれでいいというのなら、そうしようではないか。

「…専業マネと推薦マネって、何?」
「ああ、神はわからないのか。専業マネってのは、俺と白雲で、もともとマネージャー志望で基本裏側をやっているマネージャー。推薦マネはスポーツ推薦からのマネージャー転向、つまり、俺以外の男子マネだな」

橘くんの説明に、へぇー、と素直に頷いた宗くんは納得した様子で、不思議そうに首をかしげた。

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