旦那 | ナノ


091
しおりを挟む


誰から誰へのパスが多い、ってなれば、無意識に頼っていることにもなる。
そうすると、そのパスはそれからも使われる確立が他より若干高いこともわかる。
もしくは、右サイドへのパスが多いとか、左サイドへのパスが多いとか、わかると便利かなと。
そんな感じのことをつらつらと話しながら、始まった試合に視線を落とす。

「俺の仕事だろ、それ」

はあ、と呆れたようなため息を吐かれて、え、と驚いた。

「いやいや、橘くんには相沢さんの後継も頼んじゃってるからね?明らかに橘くんの仕事の方が多いよ?」
「それは、俺も興味があるからやってるだけだし、お前何時休んでんの?」
「流石に休み無しじゃ死んでます…っと花形さんのフェイダウェイで先制、と」

スコア表に書き込みながら、ふと、橘くんに声をかける。
今日の朝考えたことは、私一人でできるものでもない。
コートから視線を外さないままに、告げた。

「後継どうするよ?」
「あー…それは俺も思った、スポ選出身の男マネだけじゃ間に合わないんだよな」

どうやら、後継については橘くんも不安に思っていたらしい。
確かに、女マネが全滅だったし、今年のスポ選組は根性のある子が多いらしい。
もちろんいいことなのだが、サポート側の手が少なくなっているのも事実。
それに、まだ入部して2ヶ月、というのも確かなのではあるが…それでも、1年生マネがいないのは、辛い。
だからと言って、選手を手伝わせるのは本末転倒で。
できることなら、スポ選の子たちには、頑張って選手を続けてもらいたい、という気持ちも、無い訳じゃない。
サポートする側として、諦めずに頑張って欲しいと思うし、彼らを支えるのが存在意義でもある。

「湘北14の3Pで同点…って訳で、時間作れる?」
「いや、明らかに俺より白雲を優先しろよ、一人暮らしで神たちの面倒も見てんだろ?」
「んーでも、だからこそ融通を聞かせられるの。なるべく早い方がいいよね?」

沈黙の後、はあ、ともう一度ため息を吐かれて、そうだな、と頷きが返ってくる。
前半最後に桜木花道がリバウンドを取って、ハーフタイムに入った。
自分の鞄からスケジュール帳を開いて、どうする?と首を傾げる。

「IH前はそれどころじゃないよな…」
「うん、あと、何を重視するかとかも考えないと、」
「そうか、仕事内容も纏めたり、後輩の指導がしやすいように、方向性も決めねぇと」
「男マネにも意見を聞きながらやらないと行けないよね?やっぱり」
「だな」

面倒そうな顔をしながら頷いた彼は、肩を落として、どうするか、と呟いた。

「とりあえず、俺が男マネに意見を聞いとくから、その間に仕事纏めてもらってもいいか?」
「オッケー、相沢さんにも頼む?」
「ああ、いや、相沢さんの引き継ぎノートは俺が渡されてる」
「え、マジ?後で貸してもらってもいい?」
「おう、ついでにそれも纏めてもらっていいか?」

その言葉に頷いて、どうやって仕事を纏めておこうかと、考えながら、橘くんと視線をあわせる。
若干うんざりしたような表情ではあるものの、何処か楽しそうだ。
きっと、私も同じような顔をしているのだろう。
やりがいがある、と感じているのは、お互い様だろうから。

「じゃ、頑張りましょうか」
「だな」

丁度、後半戦が始まった。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][back to main ]


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -