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静止の声なんて聞こえない。
聞いてたまるか、付き合ってください先輩、よろしくね。
「ていうか、そもそも、顔立ちが整ってるのもあると思うんですけど、まあ、目許の泣き黒子もヤバいです。」
「…そうかそうか、」
「しかも、サーフィンやっているせいか、綺麗に焼けてるじゃないですか。」
「え、あれ、サーフィン焼けなのか…?」
「それが更に色気を増すんですけど、でもとにかく、唇の形がいいんです。」
がし、と武藤さんを掴む。
ひぃっなんて声聞こえてない。
紳先輩の唇を脳内に思い浮かべる。
はぁ、と恍惚の息が漏れた。
「欲情しそうになります。」
「お前、女だろうが…。」
「そんな些細なこと、紳先輩の唇の前では塵に等しいです。」
ダメだコイツ、とぼやく武藤さんに失礼な、と言ってから、早く仕事終えないと紳先輩の唇を触れないと思い立つ。
そうと決まれば、仕事を必死に片付ける。
男子マネの仕事も、感謝をこめて手伝い、全てを終えた後にふう、と息を吐いた。
「氷雨、」
「紳先輩!!」
わーい、と言いはしないが、テンションはその勢いで抱きつく。
さわるさわるーとキラキラした目で紳先輩を見つめれば、苦笑する彼。
ぽんぽん、と頭を撫でられる、はっと気がついた。
「紳先輩、夕食うちで食べませんか。」
「?いいのか?」
「ええ、どうぞ、泊まって下さっても問題ないです。」
「氷雨ちゃん?!」
宗くんの静止は聞こえない状況だ。
もう多分、脳内麻薬がヤバいんだと思う。
はぅぅ。
とにかく、私の家に帰る。
宗くんはシュート練がまだ残っていたので、もう暫く帰ってこない。
今日は彰くんは学校の合宿だとかでいない。
荷物を置き、紳先輩が友達のうちに泊まる旨をご実家に連絡した。
「さて、俺はどうすればいい?」
首を傾げた紳先輩にとりあえず、ソファーに座ってもらう。
その足をまたぐように、向い合って、左手を頬に添えて、右手の人差し指を準備。
フルフルと小刻みに震えているのはご愛嬌だ。
ふに、