旦那 | ナノ



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「牧さんの役って本当に女性なんですか?」
「さぁな?原作を先輩が改変してる時があるから、もしかしたら男だろうな。」

台本が配られる。
無駄に、妖精一人一人に設定があり、しかも、自己紹介シーンが存在している。
…宗くんと橘くんが死んでいる。
ちなみに宗くんの登場シーンは
「わたくしは神<かみ>に認められた美しさを持つもの、姫にも美しさを与えますわ。」
である。
絶対、先輩名字使って遊んでるな…なんて思ったのは秘密です。
逆に橘くんは
「あたし、ちょっとドジっ子だけど、祝福は完璧だよぉ!姫様に綺麗な声あげちゃう!」
なんていう台詞だ。
しかし、これを真剣にやらなくては練習が倍増。
マネージャーは関係ないと思う事なかれ、彼らの練習ありきのマネージャーだ。
その練習がハードになれば、その分マネージャーの仕事も増加する。
…あ、私の台詞はなんだろう?
「こんにちは、私は姫君に清らかな心を授けます、どうぞ、幸せな日々を。」
…勝った。
色々勝った。
そう思った時だ。

「…なあ、白雲。」
「何、橘くん。」
「お前、意味のないやり取りあるけど…」
「え?」

台本を見る。
牧さんが登場するが、牧さんの台詞は
「俺の妻を俺の許可なく連れ出すとは何事だ!原因になった姫よ、15年の猶予を経て命尽きるがいい!」
である。
なにそれ、意味不明。
でもまあ、俺の妻ってことは一応男の人設定なんだね。
「さあ帰ろう、我が妻よ。」
「ひっ、こ、来ないで下さい、私は悪の道になど落ちたりはしません!」
「何を、既に契約は交わしている、」
「やだ、助けて姉さっ…」
「氷雨!!」
あれ?
なんだろうこのやり取り。
姉さん=宗くんのキャラ。
うん、それはいい。
妻を迎えに来た=牧さん。
それもいい。
その合間にいる妖精=私。
これ可笑しい。
っていうか何でこんなとこで誘拐ネタ挟んだんだ、先輩。
そして、実名を使うな。
ちなみに小菅さんは牧さんの従者設定らしい。
黒いローブで顔なんぞほとんどわからないキャラだ。

「どういうこと?」
「ココだけで別の話が出来そうだよな。」
「うん、まあそうだけど、そうじゃないよ、橘くん。」
「ま、頑張れ。先輩の命令は絶対だ。」

うわぁ、これ収集つかない劇になると思う。
無理だよ、なんだよこれ…。

なんて思っていたのだが、皆が真剣に練習したせいか。
それとも、1ヶ月程度の練習で逆に楽しくなってしまったからか。
当日やった劇は大好評。
茨姫や王子よりも個性の強い妖精たちに人気が集中した。
ちなみに、男女ともに一番人気は橘くん。
次点で宗くんでした。
私と牧さんの話が気になる、というコメントが見られたのも否定はしない。

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