088
滅多なことでは途切れない私の集中が途切れたのは、ボールペンのインクが無くなったからだった。
…早くね?まだ一週間くらいじゃないの?
なんて思ったりもしたが、インクの部分だけ取り出して、見た様子、インクは欠片もない。
「どうかしたか?」
「…インクが終わってしまったので、新しいペンを持ってきます」
シュラに告げて、席を立つ。
懐中時計を開いて時間を確認すれば、予想外にもお昼近い。
そう言えば、今日はお弁当を作らなかった、と思い出して、二人に目線を向ける。
「ついでに、お昼食べてきちゃいます」
「なら、」
デスが声を上げた時だった。
弾けるような声、と言えばいいのだろうか、キラキラと輝く金髪が視界に入る。
「俺と!俺と食べよ!カミュも居るからいいだろ?」
「え、あ…はぁ、」
両手を掴まれて、思わず二歩引く。
苦笑したカミュさんが横から現れて、さらっと、ミロさんの手を外してくれる。
そのまま、腰に手を回されて、流れるように扉まで連れて行かれた。
「…連れて行かれたな」
「だな、アフロに何言われるか」
「えっと、カミュさん、ミロさん、何処に?」
「宝瓶宮だ」
ほうへい?ほう…宝?へいって何?
でも、この二人のどっちかだよね、ミロさんは、蠍で、天蝎宮だから。
カミュさん、ってことは、えーっと、瓶?だよね、宝瓶宮か、な?
なんて思っている間に、着いたらしい。
「座っていてくれ」
「え、あ、はい」
座っていてくれ、っていうか、座らされたっていうか。
何度か瞬きして、現状理解に努める。