正義 | ナノ



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「これ、お腹が減ったら食べて下さい」
「これ、は?」
「簡単なサンドウィッチです。お口に合うかわかりませんが」

彼が、ああ、感謝する、と受け取ったのを確認し、送り出す。
仕事場でお会いできるかわかりませんが、いってらっしゃいませ、と一礼。
唖然とした表情を浮かべた彼は目を逸らして、ああ、と小さく返事をした。
そのまま扉を閉めて、ふぅ、と息を吐いてから洗い物を始める。
パソコンとお弁当、飲み物に鞄を持って、一度室内を見まわした。
忘れ物はなし。

執務室に入ると、視線が突き刺さる。
昨日そんなに醜態を曝してしまっただろうか?と首を傾げた。
…曝したな。
ディーテさんが近寄って来る。

「氷雨!」
「はい、なんでしょうか?」
「昨日は大丈夫だったかい?」

その台詞に首を傾げた。
ディーテさんは真剣な表情で私の方を掴んだ。

「シュラに何もされなかった?アイツ、執務室に帰って来たとき様子が可笑しかったから」
「まさか、私はぐっすり寝てましたし、シュラさんがいつ部屋に来たのかもわかりませんでした」

空気が固まった。
カノンさんがなあ、と声を上げる。

「シュラは、お前を送った後、また部屋に来たのか?」
「?サガさんかカノンさんが指示したんじゃないんですか?」
「いや、指示してないが…お前か?サガ」
「いや、そんな指示していない」
「んーじゃあ、私があまりにも危なっかしかったんでしょうか…半分以上寝てて全く覚えてなくて、」

記憶がほとんどないんです、と眉を下げる。
ぼんやり思い出しながら、昨日私何かしました?と近くに居るディーテさんに聞く。
と、彼はそんなことはない、よ?と信用ならない言い方をする。
うーん、と昨日あったことを思い返した。

「眠た過ぎて、扉に体当たりしたり、シュラさんに部屋に連れて行ってもらったのは何となく覚えてるんですけど、」
「覚えているのか…?」

思わず、と言ったアイオロスさんの呟きが聞こえる。
…ええ、非常識でしたとも。
にゃんとか言ってしまったことも覚えているさ、そこは黒歴史として封印させてもらうけどな!
ごほん、取り乱してしまった、それも含めて、

「…忘れて頂けたら嬉しいです」

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