正義 | ナノ



047
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「サガさん、これ…頼まれてた、やつ…です」
「…氷雨?」
「眠、くて…限界…なので、しつれー、しま…す」

もう、無理。
鞄を持って、眼鏡を握って、パソコンを抱きかかえる。
ふらふらしながら、執務室のドアの所まで行った。
一度頭を扉に…というか、扉に体当たりしながらも、扉を開く。
ごん、と鈍い音がしたのだが、特に痛みもないので、気にせず足を踏み出す。
がし、と肩をつかまれ、ぼんやりしたまま振り返る。

「にゃん」
「…」
「……、なんです?」

ミスった、というか呂律が…。
でも、だからって、眠いからって、にゃん、はねぇだろ。
そんな噛み方したくなかった。
頭を振って、肩をつかんだシュラさんを見上げる。
眉を寄せた彼は、私の目を覗き込んだ。
瞼を必死に開けながら、首を傾げながら見つめる。

「怪我はないのか?」

こくり、頷く。
声を出すのも億劫だ。
ああ、そうか。

「ありがと、ございます。優しい…です、ね」
「いや…その、部屋まで送ろう」

荷物を持ってもらい、さら、と腰に手を回される。
が、反抗する気力もなければ、何かを言う気力もない。
というか、むしろありがたい。
私はただただ寝たいのだ。
部屋まで連れて来てもらって、入り口のドアの所で荷物を受け取る。
かくん、と頭を下げ、声をかけた。

「しゅら、さん。…ありがとー、ござ、ました」

にへらーと笑いかけて、部屋に入る。
パソ子さんを置いて、荷物を投げて、ベッドに横になった。

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