正義 | ナノ


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そう数日思い悩んでいたのだが。
予想だにしなかったところからスナイプされた。
目の前にいるのは獅子座と射手座の兄弟…つまりリアとアイオロスさんだ。
二人は、私に立会人になってほしい、と告げて、執務室で向かい合っている。
ここで本当にいいのか、いや、もしかしたら私が逃げたい一心で仕事、と小さく呟いたからだろうか。
サガさんが大きな体を縮こめるようにしているのがここからでもわかる。
数日前のムウさんとアルとのことも、ある程度効いているのかも。
一体何人の黄金たちが回れ右をして自宮に帰って行ったのだろう、できることなら私も連れ出して欲しかった。
あと、逃げられなかったカノンさんとシュラ。
これから先も逃すものか、と二人の服の裾はしっかりと掴んでいる。

「氷雨」

突然リアに刺々しい響きで名前を呼ばれて、ピクッと反応する。
チラリ、と伺うように視線を向ければ、痛いほど真剣にこちらを見ていた。
だが、それ以上口が動くことはなく、不思議に思い首を傾げる。
と、“わたし”が何か感じとったらしく、バトンタッチ。


「これでいいのか、“獅子座”」

器用に表情を変えた氷雨は目を細めて、真っ直ぐとアイオリアを見つめる。
アイオリアは、ああと一つ頷いて、アイオロスへと視線を戻した。

「俺は、兄さんが許せない」
「え?」
「サガの地上を守りたいと言う思いは本当であったと信じている。シュラが兄さんを斬ったのは反逆者には当然の対応だった。カノンについては、俺はどうにもできなかったことだと思っている」

シュラの表情が険しいものに変わる。
それと同時に、執務室の空気が重くなり、氷雨はチラリ、とその場の男たちの表情を伺った。
何を言うわけでもないが、小さくため息をつくようにして、視線をすぐに二人の元へと戻す。
アイオロスは口を開こうとしない。
ただ弟の様子をじっと見つめている。

「そう言ったものを乗り越えて変わった俺たちに、以前と同じを求める兄さんが、俺は受け入れられないと、そう思っていた…だが、」

そこで言葉を切ったアイオリアは氷雨を真っ直ぐに見据える。
強い瞳に負けず、きっちりと見返した彼女はただ静かに言葉を促すように眉を上げた。

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