232
「それもあってサガと話がしたいのだが…中々難しいな」
「難しい、ですか?」
詳しく聞けば、簡単なことだった。
単純にムウさんとアルは十二宮の守護を中心に行う必要があるからこそ、簡単には自宮を空けられない。
だが、サガさんは教皇補佐であり、執務の責任者の立場にあるため基本執務室に缶詰状態だ。
よって、時間が合わない、と。
ああ、うん、それは仕方ないといえば仕方ないし、改善しなくてはならないところでもある。
っていうかサガさんとカノンさんは基本的に聖域に引き篭もってる状態なのか。
「なるほど…」
「あ、それなら私もサガに言いたいことがあるのでご一緒したいです」
ムウさんがにっこり、逆らいがたい種類の笑みを浮かべた。
あー…これは、なんとかしてくれってことだよね?
案は2つある。
一つは、サガさんに素直に伝えて、仕事を休みにして下に降りて話をしてもらう。
二つ目は、デス、シュラ、ディーテに協力してもらって三人に守護を下の方でしてもらっているうちにアルとムウさんに上がってもらって話をしてもらう。
個人的には二の方がいいかなーと思う。
下に降りてもらって、だと来客とか気になって集中して話できないだろうし。
あと単純に話しやすいのがあの三人ってこともある。
それに…アルとムウさんがそういう行動をとった、ということがわかれば。
いや、私が口出すことじゃないのだけど。
「じゃあ、なんとかできるように頑張りますね」
確約はできないけれど…それでもいいと彼らは頷いてくれた。
肩の力が抜けたようにふわりと笑うアルは、手を伸ばして、私の手に触れる。
「ありがとう、氷雨」
「ど、どういたしまし、て…?」
まだお礼を言われるようなことはしていないのだが。
戸惑いながらも、感謝されて嫌な気はしないので、こくり、と頷いた。
爽やかすぎてびっくりしながら、唖然としている私をムウさんが笑う。
彼女が驚いていますよ、と苦笑混じりの言葉に、アルが気がついたように手を離した。
すまない、と照れたように笑うアルに首を振って、三人でしばらくお茶を楽しんだ。