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そう言って受け取ってくれたムウさんは視線を袋へ落として、もう一度ありがとうございます、と告げた。
肉じゃがが大量に詰まったタッパが入っていたからだろう。
鍋に移して温めてもらえれば、と思います。
そう告げればムウさんは柔らかな表情で、今日の夕食にいただきます、と言った。
「ああ、お客様を立たせたままではどうしようもありませんね、どうぞお掛けください」
テーブルに案内されて、座ればすぐにお茶とお菓子が出てくる。
貴鬼君が修行に行ってきます!と白羊宮から駆け出して行った。
「邪魔してしまいましたか…?すみません」
「いえ、いいのですよ。あなたからのクッキーを早く食べるために早めに修行を開始しただけでしょうから」
お気になさらず。
そう穏やかに笑うムウさんにはい、と頷いて、目の前のお茶に手を伸ばす。
いただきます、と声をかけてから口に運ぶ。
ホッと一息ついた。
「氷雨、聞いてもいいか?」
「はい?」
アルの言葉に首を傾げた。
真面目な顔をして、それから、彼は少し戸惑うように眉寄せる。
「サガの件、なんだが…」
「サガさん、ですか?」
私の言葉に、こくりと頷いた彼は、視線を一度だけムウさんに視線を送ってから、すぐに私へ視線を戻す。
困惑、だろうか。
それとも、疑問、だろうか。
曖昧な表情に一体なんだろうか、と少し不安に思う。
「以前、氷雨は俺にサガにどうなってほしいのか、と聞いただろう?」
「…ああ、はい。アルがどうしたいのか、という話からの、ですね」
カノンくん騒ぎの時にそんな話したな。
じっとこちらを見つめるアルに首を傾げた。
それが一体どうかしたのだろうか。