正義 | ナノ



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「カノンさん、」
「なんだ?」
「サガさんだけずるいとでもいいたそうな顔ですが…」
「だって、そうだろう?」

言いながら、繋いでいた手を口元に寄せるカノンは、見たことがない。
母を求める子供のようにも見えるが、その小宇宙とちらりと見えた瞳はどちらかといえば執着と恋慕とも取れる。
彼女は一度眉を下げて、カノンと視線を合わせる。
それから、少し怒ったような顔を作った。

「カノンさん、確かに甘えていいと言いましたけど、今は仕事中なのです」
「そうだな」
「私はこの書類で今日の基準は一応クリアになります。カノンさんは?」
「………、じゃあサガはどうなんだ?」
「気を失ってるじゃないですか、仕事なんてできっこないでしょう?」

何を当たり前のことを、と言いたげな彼女に、つい違う、と言いたくなる。
サガは既に起きてるはずだ。
起きた上で、あの状態なのだ。

「氷雨!」
「ディーテ?」
「仕事が終わったなら、行こう?今日は君が夕食当番だ、私は君を迎えに来る役目なのだし、ね?」

それもそうですね、と瞬いた彼女はサガの方を優しく叩く。

「サガさん、起きてください」
「…ぃゃ」
「そんなこと言わないで、ね?」

口調を、わざとだろう、変えて、青い髪で遊ぶように梳く。
完全に恋人に対する接し方のようにも見えるのだが、彼女の小宇宙はいつもの状態に変化はない。
青銅といた時の方がもっと甘く、もっと柔らかかった、とさえ思ってしまうくらいで。
渋々といったように起き上がった彼にニコリと笑いかけて、次にはそっとその頬に手を当てた。

「また明日です」
「…ああ」

不満そうなサガに苦笑した氷雨はあっさりとそのそばを離れて、書類をまとめる。
楽しそうに私に近づいてきて、そのままの顔で見上げた。

「ディーテ!あの!今日、ケーキ食べたいです」
「…ふふ、わかったよ、特別に作ってあげる」

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