正義 | ナノ


019
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私を見張りたい人間もいるのだろうが、この部屋にくるということは、仕事もするということだろう。
それぞれの仕事ぶりがわかると同時に、改善点も発見しやすい。
監視されるのは好きではないが…これでも、グラート財団を支えている一人だ。
それくらい何ともないし、最初は辰巳さんににらまれ続けていたのだから、慣れている。

「…え?」
「いえ、では、後ほど」

私の言葉が聞こえたのか、怪しんだように見てくる彼ににっこり営業スマイルを向けてから、部屋に帰った。
適当にいくつかサンドイッチを作り、朝食代わりに一つ食べる。
うん、おいしい。

ちなみに、食料は昨日沙織様に支給していただいた。
これからは月に一回食料が支給されるらしい、それ以外は黄金聖闘士に言って買って来てもらってください、と言われた。
無理難題だろ、なんて思っても、沙織様は上司。
はい、と静かに頭を下げて、冷凍庫大活躍ですね、わかります、なんて考えていた。

水筒にあたたかな紅茶を入れて、ルーズリーフと筆記用具を鞄に入れる。
それから、USBを誤摩化した…と言うのかわからないが、ネックレスのトップになっているそれをパソ子さんから外して身につけた。
荷物を確認し、兄から成人のお祝いで貰った懐中時計で時間を確認する。
そろそろ行かないとか。
道を確認しながら執務室に向かった。
未だに黄金聖闘士たち数人は立って会話している。
数人は座って、仕事を始めていた。
サガさんのもとへ向かう。

「…すいません、私は何処で仕事をすれば……?」
「そうか…それは考えていなかった。すまない、今日は…皆此処にいるようだな」
「いえ、お気になさらず…でも、困りましたねぇ」

うーん、流石に床で仕事は…できるけど、初対面で印象悪いでしょ?
ま、どうしようもなかったら部屋に帰ってもいいかなぁ?なんて思う。
サガさんも困った顔をしており、二人で周りを見渡した。
ふと、近くに人が来て、静かに声がかけられる。

「私の机を使うといい」
「え?」
「カミュ、」
「私は机の上に広げるタイプではないから、椅子さえ持ってくれば…もちろん、貴女がよければの話だが」

ありがたい申し出だ。
近くの方が監視しやすいとか思っていたのでも構わない。
これで、私はちゃんと仕事ができるのだ。
思わず頬が緩む。

「ありがとう…!そうさせていただけると嬉しい」
「、構わない」
「では椅子は、隣の仮眠室から持ってくるといい」

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