正義 | ナノ


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昨日の夕食は色々な意味で散々だった。
シュラはなんとも言えない硬さで困っていたし、それに軽くイラついた様子を見せるディーテとデス。
ニコニコと私とシュラに構い倒そうとするアイオロスさん。
疲労困憊であまり食べた気がしなかった。
別にアイオロスさんが悪いとか言うつもりはないけれど、もう少し気を使ってくれてもバチは当たらないと思うの…。
いや、あれでこそアイオロスさんなのかもしれないけれど。
ていうか多分、アイオロスさんとあんまり近づきすぎるとまずい気がするんだよなぁ…サガさん的な意味で。
彼から告げられた名前は、アイオロスさんで。
カノンさんについては言及はなかった。
サガさんのもう一人の人格である彼が生まれたのは、きっと、その辺りも関わってきているのだろう。
とはいえ、一番彼について詳しいだろう三人に聞いても、彼が何時からいるのかはわからない。

「もうちょっと親しくなったら、本人に直接聞くのが一番かなぁ…」

下手な聴き方だと完全に地雷だから注意しないといけないし、中々に難しいと思う。
つい、ため息をつきそうになるが堪える。
自分でやると決めたことなのだから、やり遂げるのだ。
よし、と気合を入れて執務室に向かう。
今日は誰がいるのだろうか、と見回せば、サガさんとカノンさん、それからアイオロスさんもいるようだ。
リアとミロさんがなんとも言えない表情で顔を見合わせている。
…なんだか、違和感を感じる。
一体なんだろうか。

「おはようございます」
「おはよう!氷雨ちゃん!こっちおいでよ!」
「氷雨、おはよう」

ミロとリアがハッとしたように声をかけてくる。
ニコリと笑って、魔のトライアングルから離れるようにそちらに向かう。
…何なんだろう、あの空間。
アイオロスさんがあの状況を作り出したのだろうとは思うが、それにしては何かおかしい。
机にカバンを置いてからサガさんの元へ向かう。
と、違和感が顕著になる。
思わず、二人共を視界に入れて、足を止めた。

「氷雨、どうした?」

カノンさん、から、声がかけられる。
何故かわからないが、カノンさんから“サガさん”を感じるのは気のせいだろうか。
首を傾げながら、口元に手を当てていれば、サガさん、が、私を心配そうに見てくる。
表に“彼”が出てきているときに似た表情だ。
なんだろう…やはり何かが違う。
一度メガネを外して、ハンカチで拭いた。
それからもう一度、メガネをかけ直して、まずサガさんに顔を近づける。
じーっと5秒ほど見つめて、それから、今度はカノンさんを。
そこまでして、やっと違和感の正体に気がついた。

「ああ…なるほど。では、今日の私の仕事をいただきますね」

にこり、笑って仕事を受け取る。
カバンを置いた席に戻り、すっきりした気分で仕事を始めた。
リアとミロさんから不思議そうな視線を向けられて、ふふ、と笑ってみせる。
が、途中休憩をしようとして、ふと気がついた。
サガさんについてはどちらも甘やかす状態でこれなわけだから、結果的にどうなるかといえば。
…面倒だから本人たちに聞こうか。

「サガさん、カノンさん、紅茶を淹れましょうか?」
「俺も、か?」
「ふふ、だって今日は二人ともよく似せてるみたいですから。お二人とも甘やかしてほしいのかと思いまして」

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