正義 | ナノ



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今日は何故か久しぶりに全員が執務室に集合している。
その所為で、またもや座る場所がなかったのだが、リアとミロさんの隣ではなく、カノンさんの隣に座っている。
仮眠室のすぐ前と言ってもいいくらいに近くて、とてもいい席だと思う。
閑話休題。
とはいえ、全員集まるのは大体一ヶ月ぶりくらいなのではないだろうか?
原因として思い当たるのは、昨日の私の修羅場的なアレだが、多分他にも何かあるのだと思う。
昨日と言えば、ディーテの作ってくれた夕食美味しかったな、と関係ないことに考えをシフトさせてから、書類を捲る。
ふう、と一度息を吐いてから、ペンを回した。
昨日の分を取り戻さなきゃ行けないんだから、集中しないと…!
どれくらいだかわからないが、文字だけを追いかけていると、ふと、突然声が聞こえる。

「氷雨さん、終ったぜ!…後どれくらい?」

ああ、答えなくては。
そう思って、今進んでいる書類と休憩前に終わらせる書類を脳内でカウント。
聞かれた内容に答える。

「あと、30分…やっぱり1時間待って、星矢君」
「…わかった」

不満そうな声が返ってきたのを感じて、意識を書類に戻した。
二枚ほど進めてから、違和感に気がつく。

「…星矢君?!」
「あ、星矢ー、氷雨さんやっと気がついたよー」

ばん、と目の前に手をついて顔を上げる。
目の前でニコニコしていたのは瞬君。
彼の後ろを見ると、紫龍君に一輝君までいた。
ぽかんと彼らを見つめ…何かを理解したのだろうか。
今まで感じたことのない位の安心を、安堵を感じて、呆気にとられる。

「氷雨…?」

誰かの声が聞こえた。
ぱた、と水分が紙を叩く音が響く。
唐突にその音の理由を理解した私は、勢いよく立ち上がり、すぐ後ろの扉を開いて、仮眠室に駆け込んだ。
ばたん、と勢いよくドアを閉めて、頬に触れる。
濡れた感覚が手について、やはりあの音は涙だったのだと確信した。
泣いている感覚がなかった。
この涙はやはり、嬉し泣きに分類されるのだろうか。
関係ないことを考えながら、自分が逃げ込んだ先に冷や汗を流した。
…ここ、仮眠室だ!
どうしよう、執務室経由しないと自分の部屋に出ていけない。

「氷雨さーん、開けてよー」
「むっ、むり…!」
「無理って…別にそんなに気にしなくていいでしょ、結構あることだもの」

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