正義 | ナノ



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白銀さんたちの情報をむりやりまとめた五日目。
山になってたあの書類、最近って言ってたじゃん?
私、てっきり此処1、2年のものだと思ってたの。
違った、10年ぐらいのがごっちゃごちゃになってた…多分崩れて詰み直しとかしたんだろうね…。
年代もてんでバラバラで、もうどうしたらいいのかと。
その事実に気がついた時、何処からか心の折れる音が聞こえたような気がする。
他の仕事を生贄に!白銀聖闘士の情報を召喚!は成功したんだけど、問題はそのあとだよね。
現地での能力やら働き振りと、書類処理とか事務的な能力はわかったけど、性格と割り振りが。

「ヘタに性格合わない人たちを組み合わせたら、私が恨まれる結果になるよなー」

なんでこれ決めた奴はこんな組み合わせにしたのかと。
あと仕事の割り振りに向き不向きが…これは黄金で分けよう。
それにしても目が乾くな、なんて瞬きを繰り返していると、後ろから肩を叩かれた。

「?」
「前を見て歩かないと危ないよ」

にっこり、笑みを浮かべたアイオロスさんに思わず頬が引き攣りかける。
無理矢理それを押しとどめて、ありがとうございます、と笑った。
それから、すみません、と素直に謝っておいて、叩かれたまま肩に乗っている手に視線を向ける。
が、外してくれそうにない。
乾いた目が痛む、何度か瞬くと、やっと乾きが収まったようだ。
ホッとしていると、目の前の彼が笑う。

「緊張してる?」

何故唐突に。
と、思ったが、瞬きが多いと緊張してるって言うのがあったような気がする。
…え、何この人心理にも精通してる系の人?怖い。
緊張もあながち間違ってないのだろう、熱いような寒いような、不思議な感覚に包まれる。

「そう、ですねぇ」

言いながら、何のつもりも無く、首に手を当てる。
汗をかいているようだが、酷く冷たい。
此処でやっと、自分の体調がかなりマズいという事実に気がついた。
視界が、徐々に網掛のような何かに上から徐々に侵蝕されていく。
見える世界が狭くなっていきながら、色が減る。
徐々に手が震え始めた。

「…仕事を、続けるために、戻っても…?」

呼吸が荒くなりそうなのを無理矢理抑える。
肩に置かれていた手の感覚が無くなっているので、多分、大丈夫だろう。
踏み出した足から、力が抜けかけ、慌てて立て直す。
視界が、もう、半分も残っていない、幕が張ったような耳鳴りが続いている。
アイオロスさんが何かを言っているのだが、半分くらい聞こえてこない。
大丈夫、まだ…倒れない。

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