正義 | ナノ


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何か問題が起きないように。
言葉はなかったが、そういうことだ。
女性聖闘士が仮面を付けている理由も、女官に神官がつく理由も、大本は同じだろう。
そこから派生していった内容や、別の意味合いを持った部分もあるだろうけど。
そう思いながら、顔の前に仮面を持ってくる。
思わず仮面をひっくり返し、覗き込む。
くるり、ともう一度仮面を回した。
マジックミラーのようだ…。
が、ふと気がついた、この仮面ってどうやって装着するんだろう?
耳のところに紐があったりはしないし、ついでに空気穴なんかもない。
しかし、顔に当てると、呼吸ができる。

「ちなみにその仮面は小宇宙によって、装着されます」
「…え、」

小宇宙とか、目覚めてないんですけど。
なんて弾かれたように、ムウさんを見ると、堪えきれないと言ったように吹き出した。
…からかわれた?

「正確には、小宇宙が扱える可能性?を持ってればいいんだよ」
「…聖闘士になる素質ってことね、ありがと、貴鬼くん」
「そうでなければ、素養がない状況の訓練生は着けられませんから」

未だにクスクスと笑っているムウさんに、そんな変な顔だったかと眉を寄せる。
そして、思い立って、仮面をつけてみた。
まるで吸い付くように、ぴたり、とくっつく。

「服装があっていませんね、貴鬼、」
「はぁい、ムウ様。お姉ちゃんこっちー!」

手を引かれ、洋服を手渡される。
ズボンとTシャツと…って、これ今貴鬼くんが着ている服の色違い、じゃね?
いや、確かに身長追いつかれつつあるけど、でもまだ、頭一個分は私の方が大きいんだよ。
なんて思いながらも、受け取って、案内された部屋で着替える。
ちょっと太腿とお尻の辺りがキツいのだが、一応着られた。
お腹の辺りは問題ない、あと、半袖の上着が大きめで膝くらいまであったので、足の辺りは見えない、大丈夫。
着替えて出ると、貴鬼くんが抱きついてきた。
驚いていると、腰に紐が縛られる。
あ、抱きついてきた訳ではなかったのね。

「私のお下がりですが…大丈夫そうですね」

にこり、笑いながら告げられた内容に、一瞬言葉を失う。
ただ、仮面をつけているので、一応…表情は伝わっていない筈だ。

「ムウさんの、でしたか。お借りします」

ぺこり、と頭を下げると、眼鏡がズレる感覚があった。
俊敏に眼鏡を抑えるように手を動かす。
だが、手の上に落ちてきたのが、眼鏡ではないことに気がつき、一瞬理解が追いつかない。
…あ、仮面か。

「なるべく、下を向かない方がいいみたいですね」
「…ですね」

相変わらず楽しそうにしているムウさんに、肩をすくめた。
彼は案外笑い上戸なのかもしれない。
なんて思いながら、私の手を貴鬼くんが引いて、目が合う。
少しだけ不満そうな顔に頭を撫でて、じゃぁ、案内してくれますか、と声をかけた。

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