正義 | ナノ



006
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美穂ちゃんが来たところで出発しようとしたとき、ふと、視界に入った影に声をかける。

「一輝君」
「っつ、…氷雨、か?」
「そうだよ、一輝君は日に日に凛々しくなってるみたいだねぇ、数ヶ月ぶりなのに見違えたよ」

彼は驚いたようにこちらを見て、少し目を細めた。
にっこり、笑って言えば、彼はふい、と目をそらした後、問いかけてくる。

「…どこへ行く?」
「近くの大型デパートだよ、あそこなら大概何でも揃うから」
「手伝ってやる」

話を聞いていたのか、一輝君は私たちの隣に並んだ。
学校は?と問えば、建立記念日で休みだそうで。
じゃぁ、お願いしようかな、と笑えば、ああ、と素っ気ない返事が返ってくる。
そういえば、彼らは一時期ギリシャに行っていたんだよね、とぼんやり思う。
私が大学生のときだったから、そんなに気にしていられなかったけれど。
私は見ていないが、テレビで戦っていたようだし。
…ほら、大学の一人暮らしってテレビ見ないじゃん?
テレビじゃなく、直接会ったりはしてたんだよ、巻き込まないようになのか何も話してもらわなかったけど。
ほら、私知ってるからね、それで若干ごちゃっとした時期はなくはなかった。
っと、蛇足すぎる話はこの辺にしておいて。

ふと私のパソ子さんに想いを馳せる。
ギリシャに言ったことのある彼らに話を聞こうかな?
私の精密なパソコンはノート型のお試し版で、場所はそこまで取らないし持ち運べる。
まだ、世間にはデスクトップしか普及してないのでちょっと嬉しかったり…。
なあんて、考えながら、彼らを学校まで見送る。

それから、ゆっくり歩く方向を変えて、デパートへ向かった。
重いものを軽々持ってしまう一輝君に感謝しながら、私は彼の筋力を純粋に評価している。

「すごいねぇ、そんな重いものも持てて…手伝ってくれてありがとうね」
「…かまわん」
「お礼に、ご飯食べにいこうか。一回帰って、それから出かけよう?」
「…、」

返事はないが、拒否の言葉がないのでオッケーだろう。
一度、城戸邸に帰って、それから、もう一度外へ向かった。

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