対価
使者を追い返し、蜀は天下統一のために動き始めた。
とはいえ、その統一は予想以上に楽に進む。
どうしてなのか、と考えても思いつく要因が軍師陣しかない。
彼らが何かを行動し始めたのか、それとも、何か企んでいるのか。
「とはいえ、これで統一はすぐそこということだな」
そうすれば、巫女姫との話も出来るだろう。
現在仙人に守られた状態で、蜀武将の数人としか対応していない。
平和になるまで、閉じこもって出てくる気はないらしい。
そんな行動にはあ、とため息を吐いてから、真っ直ぐ前を見つめた。
いい加減に、終わりにしたい。
天の意志もどうやら蜀の統一を応援してくれているらしい。
天候も、人も、すべてが私たちの味方となっていた。
そして、数年かけて、天下は一つになった。
「おめでとうございます、君主殿」
とはいえ、君主殿は自分がすべてを統一することよりも、それぞれの土地はそれぞれ管理することを求めた。
結果的には、荊州に定期的に集まって会議的なことになった。
ついでに荊州には巫女姫が駐在することになっている。
その準備やら三国に同様の法を馴染ませる準備やら。
兎にも角にも、忙しい…此処数年休んだ記憶がないくらいには忙しかった。
軍師たち全員が常に頭を付き合わせていて、ああでもないこうでもないと。
「…郭嘉殿に賈ク殿、今日はどうした?」
「おや、李雪殿」
「覚えられるほど関わったつもりはないが」
「ふふ、女性の名前くらい一度聞けば覚えられるよ」
にこり、笑う軽薄軍師にそうか、とだけ返す。
酷くどうでもいい特技だ。
それより本題を早くしてくれないかと、賈クの方へ向き直る。
何か問題があったのだろうか。
「それで?」
「いや…特にこれと言って用はないんだが、郭嘉殿がね」
「どうしてもあなたに会いたくて、来てしまったんだ」
ふふ、甘く微笑む彼に思わず眉を寄せて、はあ、とため息を吐いた。
が、ふと、そうかと微笑み返す。
対価「だったら、私が喜ぶ話の一つくらい持ってきたんだろうな?」
私の言葉に、彼はにこりと笑みを深めた。