狼心狗肺 | ナノ



指針
しおりを挟む


「そんなことより、氷雨、昨日は何処にいたのだ?夕食も摂っていないだろう?」

阿斗様が首を傾げて見上げてくる。
そんなことで纏められたぞ、と思いながらも、彼の目を見つめた。

「昨日は武器庫で寝ていました。食事は元々最低限取れれば問題ありませんから」

お気になさらず。
言いながら、彼を見ると、不機嫌そうな顔をしている。

「落ち着いたら、共に食事をする約束だっただろう?」
「…申し訳ありませんが、私の記憶には、」
「うむ。だが、今したではないか」
「……わかりました。今日は一日阿斗様と一緒にいます。それで構いませんね?」

そう告げれば、満足そうな表情をする阿斗様。
その反応に頭目殿と彼女の子だと、漠然と思う。
阿斗様は嬉しそうに私の手をとる。

「ならば、朝食に向かうとしよう。そうだ、氷雨」
「何ですか?」
「首輪が必要なのであれば、父上に頼むぞ?」
「…お気遣いだけで」
「そうか…だが、氷雨の瞳の色の宝石をあしらった首輪なら、氷雨にきっとよく似合う」

にっこり、幼さの残る満面の笑み。
だが、コイツは明らかに腹黒く育つな、と確信した。
彼女との違いはそこだろう。
が、まあ、それが悪いとは言わない。

「ありがとうございます」

答えると、嬉しそうに笑う。
そのまま朝食をとり、一日阿斗様のお世話…というよりも暇つぶしの相手をした。
ついでに、勉強を見たり、武術を手伝ってみたりも、しなかった訳ではない。
その夜、また武器庫でいいかと、思った私に阿斗様からストップが掛かった。

「結局、こうなるんだな」
「君が一人で何処かに行くとか言うからじゃないかな」

徐庶が眉を下げたままそう告げる。
何故か、徐庶と同じ部屋なのだ。
まあ、慣れてはいるが、だからと言って、一応男女だぞ、と思わないでも無い。
何か間違いがあるか、と問われたら、無いと言いきれる。
あったところで、気持ちが動くことも、あり得ない。

「氷雨、本当に一人で行くつもりかい?」
「さてな。蜀にいた方が巫女姫に会いやすいというのなら、そうするさ」

道は目を使えばすぐにわかる。
だが、今回の選択は、目を使う気はなかった。
多分、目は、蜀に留まることを示すだろうと、わかっている。

指針
この目の問題点はただ一つ。
天とやらが決めている意志が見えるだけということだ。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -