覚醒
周りがうるさい。
「…うるせぇ、」
「氷雨!」
私の寝ていたらしい寝台に飛びついてきたのは、徐庶。
もう平気なのかい?頭痛は無い?異常は?矢継ぎ早に問いかけを繰り返す。
それを無視して視線を動かせば、馬岱殿と趙雲、頭目殿に諸葛亮…こう言った方が早いか、ほぼ全員いた。
星彩が冷静に告げるには、どうやら私は貧血で倒れたようだ。
傷は治るとは言え、血液は戻らない。
まあ、迅雷剣で身体貫いたり背中思いっきり裂けたり、それ以外にも細かい傷も多かった。
最後には額に矢を受けてるし、と思って気がついた。
ふ、と顔に触れる。
明らかにデカい仮面が私の顔を覆っていた。
「魏延殿か、ありがとう」
「構ワヌ…我、氷雨、困ル、見タクナイ」
「だが、これは魏延殿の予備の仮面では、」
聞けば、こくりと頷く。
それでも無いよりはいいだろう、ということらしい。
本当に有難い。
「元直、問題ない。だから、少し休め…私としてはお前が心配だ」
「氷雨ッ!」
「…馬岱殿、身体に違和感は無いか?」
返事が無い。
「…馬岱殿?」
「氷雨殿の馬鹿!」
徐庶を押し退けて、抱きついてきたのはいい。
だが、生憎と私は目が覚めたばかりで、彼を支えることなどできない。
そのままぼふ、と寝台に倒れ込み、なんだか押し倒された状態のようにも思えなくも…うん。
普段は高さが違うので顔と顔が近距離にあることはない。
よって、はじめて鼻梁同士がぶつかっている。
とは言え、仮面があるので若干の距離はある。
苦笑しながらその頬に触れた。
「気兼ねなく甘えられる人は失いたくないものだろう?」
「馬岱殿!」
私が囁くのとほぼ同時に、押し退けられていた徐庶とその後ろにいた趙雲が馬岱殿を呼んだ。
覚醒直後、月英が女性陣以外の全員を追い出す。
強いな、と苦笑して、感謝を述べておいた。