死闘
馬岱殿と背中をあわせ、囲まれた状況に舌打ち。
とはいえ、此方に味方は向かってきている。
耐えられれば、乗り切れるだろう。
迅雷剣を龍槍に持ち替えて、一人ひとりを見た。
真っ直ぐにこちらを見てくる隻眼の武将。
それから、明らかに歳若い、10代前半だろう、冷静な目をした迅雷剣を構える少年。
その隣の少年と同い年程度に見える、大剣を肩に担ぐ、厳つい鎧の少年。
思わず、眉を寄せた…が、仮面故に誰にも気がつかれはしない。
冷静に詳しく視る時間は無い、だが、確認する程度なら出来るだろう。
思って、視る。
「ッ?!」
いつもより鮮明に視えた道に気がついた。
巫女姫が、近くにいる。
「危ないッ」
馬岱殿の声。
スローモーションのように散った血液に、目を見開いた。
龍槍で距離を取らせ、道を視る。
馬岱殿を救える道は、どれだ?
倒れ掛かってきた彼を片腕で抑え、右腕を大きく振るった。
「そこをどけぇえええ!!!」
馬笛で馬を呼び、そのまま止まらせずに馬岱殿を乗せる。
出来た道に馬を走らせ、向こう側にいる関索や趙雲に一旦渡し、私がここを片付ければいい。
どうせ、すぐに回復するのだ、持久戦となれば此方の勝ちが確定する。
「殺せるものなら殺してみろ」
うっすらと口元に笑みを浮かべ、迅雷剣に持ち替えた。
斬られようが、貫かれようが、関係ない。
治るのだから無理無茶など存在しない、危険だって、無いのだ。
ざくり、腹に突き刺さった私のものではない迅雷剣に笑う。
そのまま、その刀身を抑え、捉える。
「生憎と、この程度では死なん…化け物なのでな」
くつり、くつり、喉を振るわせて笑った。
私の尋常じゃない様子に、迅雷剣の持ち主が武器から手を離す。
そのまま刀身を引き寄せた。
それは私の身体を突き通し、後ろから攻撃しようとしていた男が慌てて飛び退いたのを感じる。
腹に刺さったそれをすぐに抜いて、地面に捨てた。
じわり、傷が治ったのを感じながら完全に動きが止まっている敵将たちに視線を向ける。
その隙にそのまま炎の中を走る。
馬岱殿を乗せた馬を連れ、目指すは、ただ一人。
死闘目当ての女は戦場で唖然としている。
回りには戦いを始めている呉の将兵が数人いた。