発覚
「…孔明、時間を取ってもらえないか」
私の言葉に、少し不思議そうにした諸葛亮は、それでも頷いた。
彼と向い合って、静かに口を開く。
「都督殿に、彼女の体調が良くなるまで面倒を見るから、残らないかと言われた」
「何平然としてるんだ!明らかにそれは、」
「私を引き抜きに掛かっている、と考えていいだろう」
徐庶の横槍に苦笑しながら、頷いた。
だからと言って女性たちへの認識が変わった訳ではない。
“私”に対してのみ、の行動なのだ。
だからこそ、不安が現れる。
「あなたが、巫女姫と同じような能力があるのではないか、ということですか」
「ああ。限定的なものではあるが…私の力の原因は彼女の力を入れられたことだ」
警戒していて損は無いだろう。
続けながら、は、と力を抜くために息を吐き出す。
そのような力は要らない。
力は要らないから、帰りたい、それがだめなら居場所が欲しい。
戦いの力も、視る能力も要らない。
だから、と拳を握っていると、ホウ統が苦笑しながら私の掌を開かせた。
「思い詰めるんじゃないよ」
「…わかっている」
今はまだ会うべきではない。
赤壁が終わってから、それから彼女と会って、話をしよう。
怒りでまともに言葉が出ないかもしれない。
だが、それでも話さなくてはならないのだ。
彼女の本心を知るために。
そして、私の真実を知るために。
「氷雨、聞いてもいいですか?」
諸葛亮の言葉に首を傾げた。
羽扇で口元を隠し、彼は口を開く。
「天界から来たと言う巫女姫の力を入れられたあなたは、何者なのですか?」
「…巫女姫と同じ世界から来た」
苦笑しながら言葉を返した。
驚いたような視線を受けながら、続ける。
「…化け物だと、言ったじゃないか。巫女姫も私と同じだ」
少しでも視線から逃れるように俯いて、唇を噛んだ。
聞かれたくなかった、などと私が言うのは可笑しいのだろう。
前もって伝えられるような内容でもないし、化け物であり続けるのは疲れると知ってしまった。
出て行けと言われたら、出て行くしか無い。
自分の国を外に持つ、部外者なのだから。
「…帰らない、よね?」
「簡単な説明をした奴の話によれば、私は一生帰れないそうだ」
「そっか…ごめん、俺嬉しいや」
徐庶の言葉に目を見開く。
何を言っているのかと激昂しかけるが、その顔が酷くホッとしたものだったから、思わず動きが止まる。
がしり、腕を掴まれて、そのままいつも馬岱殿にされているように抱きしめられた。
発覚君がいなくなるなんて、俺は嫌だから
耳元で、徐庶はよかった、と繰り返した。