密会
「周瑜殿、少しお時間よろしいですか?」
密会したあの日からというもの、私は都督殿、親劉、元脳筋の軍師3人とよく会っている。
その過程で彼らからさり気なく聞き出したのだが、本当に呉オワタ状態である。
完全に巫女姫の逆ハーレムと化しているようだ。
孫堅殿から孫策、孫権まで、孫一家の男はメロリン状態。
ついでに甘寧、凌統、陸遜、周泰、太子慈、丁奉もアウト。
韓当や黄蓋までも完全アウト。
此処に居る3人もべた惚れらしいが、一応軍師なこともあり、強制で此方らしい。
嫌々なのだろうが、まあ、それでも話が進むのなら構わない。
ついでに、蜀の他の女性陣は呉の女性陣の引き込みに尽力して頂いている。
「ああ、構わない」
冷静そうに頷いた都督殿ではあるが、実際ははらわたが煮えくり返りそうなのだろう。
だって、彼の目線の先には呉の巫女姫とその回りに侍る蜀の武将たち。
武器を取って喧嘩はしないものの、呉の将たちもその近くで苛々としている。
ちらりと見えただけで、巫女姫に対するいいようのない感情が沸き上がりそうになった。
と、私の視界を遮るようにデカい壁が立つ。
感情が漏れてしまっただろうか、と思わず俯いた。
「そのような顔をさせたかった訳ではないんだがな」
「…え?」
「辛いのだろう?」
落ち着いた低い声に驚きながらも、首を左右に振る。
大丈夫です、口元に笑みを浮かべながら告げた。
親劉殿は険しい顔付きになりながらも、そうか、とだけ答える。
「それで、魏についてなのですが、」
「うむ…我ら呉の中でも降伏と交戦に別れているのだ」
元脳筋軍師の言葉にこくりと頷く。
そりゃ、あんな大群だ。
明らかに負けるだろうと思われても可笑しくない。
「ですが、曹操は女好きとも聞きます。降伏であっても、交戦後負けたとしても、巫女姫殿は、」
私の言葉に、三人がぴくりと反応をした。
よし、と思ったのだが、どうやら様子が可笑しい。
何か間違っただろうかと彼らの様子を見、首を傾げる。
「どうか、なされましたか?」
「いや…なんでもない…だが、そのことは殿も大殿も孫策もわかっているだろう」
「皆様は…どちらなのですか?」
素直に問いかける。
どこか、気安ささえ感じさせるような口調で、ゆっくりと。
都督殿は目を細めそっと微笑んだ。
「あなたと同じだ」
様子が可笑しいところがあったものの、抗戦論なら問題ないか。
ホッとしながら、私も口元に笑みを浮かべる。
彼らの様子が可笑しい理由は、きっと、巫女姫のことを考えたからだろう。
そう結論付けて、今日のところは失礼いたします、と頭を下げた。
密会ちょっとまってくれないか、と呼び止められる。
振り返ると、彼らは何とも言えない顔をして私を見つめていた。