恋人
「関平殿、関興殿、関索殿、迷惑をかける」
私の言葉に三人は首を左右に振る。
三人とも、今回の作戦では中心にはならないとは言え、巫女姫の寵愛を得る可能性がある。
つまり、用心するに越したことはない。
「ただ、拙者は…色恋には疎く、どう振る舞ったものかと」
長男の言葉に苦笑する。
「関平殿はそのままで。悩みながら、他人の様子を見ながら学ぶといい」
「まるで、私たちがなれているみたいな物言いだね?」
「関索殿も関興殿も驚く程に女性を口説くのが上手いじゃないか」
「…本命には、できない」
次男の言葉に思わずぽかん、とする。
本命いたのか。
それは…申し訳ないことをすることになるな。
とはいえ、抜けられると困る訳で。
だが、未婚の蜀…妹殿は無いだろうから、星彩か発明家殿、鮑殿あたりか?
それとも、民にいる名もなき女性かもしれない。
「本命には説明してあるのか?」
「大丈夫、だと思う」
「なら、いつも通りでいい。巫女姫は関興殿の本命に対する行動を知らないのだし、教える必要もない」
ふと思ったが、次男は口説いている自覚があったのか。
驚きの真実を胸の奥にそっとしまって、いつか誰かに話したいと思いながら、三男に目を向ける。
「関索殿には鮑三娘殿の件についても迷惑をかける」
「構わないよ。他でもないあなたが、直接私にお願いしてくれるのだから」
「…そういうのは、鮑三娘殿と巫女姫にだけ言ってやってくれ、勘違いで睨まれるのは堪ったものではない」
巫女姫は平気かもしれない。
が、鮑殿は面倒だ。
これから先同じ場所にいるということも大きい。
「私と彼女は別にそう言う関係ではないのだけど…」
「は?嘘だろ?」
思わず口をついてでた言葉。
いやいや、手を繋いで甲板を歩き回ってたり、二人でいたり、隣同士で楽しそうに話してたり。
明らかに恋人同士だろ?
ていうか、だからこそ…え?
「やはり李雪殿もそう思われておりましたか」
「…ああ、違う、のか?」
長男に聞き返せば、拙者もそう思っていたのですが、と返される。
信じられない発言にぽかん、と口を開いて、次男を見る。
こくり、一度頷かれる。
「彼女はとても愛らしい人だけど、私が好きというより、恋している自分が好きみたいだからね」
苦笑と共に告げられた言葉に、思わずマジか、と呟いてしまった。
恋人え、なに、つまり感覚的には、女子高生?
固まった私に次男が近寄って、小さく笑った。