狼心狗肺 | ナノ



逆転
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呉に到着した。
私はその場にいなかったのだが、早速趙雲殿は巫女姫に会ったらしい。
そして、手順を踏んだようだ。

「どうやら手順はかなりわかりやすいらしい」

徐庶の言葉に首を傾げる。
趙雲殿から徐庶が話を聞いたらしい。
まず、触れる。
とその瞬間、自分とは別のものだと意識し始める。
次に、彼女が名前を呼ぶ。
甘やかな響きが自分を呼んでほしいと思わせるとか。
それから、彼女が笑顔を見せる。
結果彼女=守るべきもの、と認識を深める。
最後に、彼女の名前を呼ぶ。
離れたくない、という意識が強まり、惚れた状況になるそうだ。

「はー…その一連の流れを違和感なくやってのける手腕がすげぇな」
「…感心してないで、これからどうするのか考えてくれないか」

困ったように眉を下げた彼に笑う。

「元直は彼女に出会って、恋に落ちればいい。そして、私と意見を対立させる」
「とはいえ、会うことが出来るかな?」
「自分の顔をもう一回見て来い。そうすりゃわかる」

ひらひらと手を振ってみせると、眉を寄せたまま、不満そうな顔をする。
なんで中途半端に自信がないのかね、この男は。
はあ、とため息を吐けば、更に眉が下がる。

「君の顔立ちが整ってるって言ってるのに、なんでそう不満そうかな?」

口を尖らせながら、視線を逸らした。
と、嬉しそうな顔をした彼に言葉にされたかっただけかよ、と額を抑える。
へらり、と笑った笑みと共に、徐庶が近寄ってきた。

「なんだ?」
「なんでもないさ」

言いながら隣に座る徐庶に何だかさっき言ったことが恥ずかしくなってくる。
その顔が嬉しそうなのもその要因だろう。
軽くグーを握って、ぼす、と軽すぎるパンチを食らわせる。
驚いたような顔に視線を逸らして、もう一度。

「俺、何かしたかな?」
「うるせえ」

くすくすと笑っている気配。
ムッとして、もう一度軽く彼の見た目よりも逞しい肉体にパンチ。
ふと思い出して、告げる。

「あ、本気で惚れちゃった場合は略奪頑張って、って伝えといて?」

逆転
情緒がないなぁ、苦笑する徐庶にもう一度うるせえと返す。
見守るような柔らかな笑顔で、ぽんぽん、と頭を撫でられた。

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