謝罪
目が覚め、目元に手をやる。
付けられた仮面にホッとしながら、視線を彷徨わせた。
「あ、気がついた?」
「…馬岱、殿」
ニコニコと笑顔のまま私を見ている顔に口元が緩む。
幼子のように手を伸ばせば、気がついたようにその手を掴んでくれる。
その事実に安心したのか、また視界が揺れた。
とはいえ、彼に依存してばかりではいけないのもわかっている。
まだ、暫くはこの優しさに甘えてしまいそうだが。
「どうしたの?」
首を傾げながら、私の顔を覗き込む。
身体を起こすようにしながら、彼の手を引き寄せる。
その胴体、というか腰元に抱きついて、深呼吸。
「ちょ、ちょっと待って」
少し焦ったような声に、素直に離れる。
それから寝台に座り込んだ彼は私をじっと見つめた。
頬が赤く染まっていて、寒かったのだろうか、と手を当ててみる。
だが、別に冷えている訳でもないようだ。
「な、にかな?どうかしたの?」
「馬岱殿を確認したい」
告げれば、眉を下げて笑う。
俺はいなくならないよ、と告げた彼に一度頷きながら、その大きな身体に抱きついた。
真っ赤な耳を不思議に思いながらも、おずおずと回ってきた手にリラックス。
特に気にすることでもないだろう、と彼の肩に額を預けた。
何度か深呼吸してから、ありがとう、と告げ、身体を戻す。
寝台から起き上がり、扉を開けた。
星彩の父君と兄君が正座をしている。
ついでに、その後ろで星彩がすごい怒っており、私を見た瞬間申し訳無さそうな顔になった。
大丈夫、と苦笑したまま、仮面を外し、しゃがみ込んだ。
星彩の兄殿と燕人殿は驚いたような顔をしている。
「この目の所為で、石を投げられ、人間であることを否定された」
「李雪殿…、」
「君たちがそのようなことをするはずないと知っていたのに…すまなかった」
「氷雨が謝る必要はないわ。全ては兄さんと父さんが悪いのだから」
星彩がそれに、私も、と続けた。
それを否定して、仮面を戻す。
あ、と星彩の兄殿が声を上げた。
「何だ?」
「綺麗だから、勿体ないと思って、」
「星彩の兄なだけあるな…ありがとう」
笑って告げて、その髪をそっと撫でる。
唖然としているその顔に笑って、無名軍師の部屋に向かう。
と、そこには軍師3人が揃っていた。
「どうしたよ?」
「あなたが頼ってくれない、と落ち込んでいた元直を慰めていたんですよ」
「それは孔明も士元もだろ!」
裏切り者、とでも言いたそうに、声を上げた徐庶に笑う。
私は予想以上に彼らに認められていたらしい。
謝罪すまない、十分頼っているつもりだったんだが
私の言葉に信じられないと言葉が返ってきた。