狼心狗肺 | ナノ



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色々あったが、最終的に臥龍が二人に何か告げて、渋々と言ったように引き受けてくれた。
最初からそうすれば良かったのに、と視線を向けると、彼ははあ、とため息を吐いた。
失礼な、と思いながら、視線を逸らし、リラックスモードに入る。
従弟殿のところ=リラックスモードと切り替えをつけるようにしてあるからだ。

「ぎゅー…」
「よーし、まかせてよー」

楽しそうな声と共に、苦しいくらいに抱きしめてくれる。
自分以外の誰かではあるが、すっぽりと包み込まれるようなこの感覚は好きだ。
圧力で息苦しく感じるのも、生きているのだと理解出来て気に入っている。
生憎と私の腕力は一般女性に少しプラスされた程度なので、強いと言える訳でもない。
だが、抱きしめ返すようにぎゅうと力を入れて、彼の胸元に頭を預ける。
ぽすん、と軽い音がするのは、私の頭が軽いからではないと、ここに明らかにさせてもらう。

「またやってるのかお前ら」
「若も一緒にやるー?」
「従兄殿も参加していいぞ?」

通りかかった従兄殿に笑いながら告げると、はあ、とため息を1つ。
が、諦めたように口元に笑みを浮かべてから私の背中側から抱きついてきた。
彼の手は私と従弟殿の間に滑り込み、絶妙な力加減で抱きしめてくれる。
私にも従弟殿にも顔を見せないように俯き加減で、私の髪に頬を寄せた。

「…氷雨、」

臥龍の呆れたような声にそちらを見る。
視線が合えば露骨に眉を寄せられて、ふ、と笑ってみせた。

「この場所は譲らないぞ」
「…譲ってほしいとも思っていませんよ」

諦めたような顔に少しだけ笑ってから、従兄殿が離れるまではこのままにしておくことを決める。
こうしておくことで、従兄殿はどうやら精神統一しているらしいのだ。
その理由は、多分、嫁と子供を失っているからなんじゃないかと、勝手に予想しているが。
実際は誰かに触れていたいのかもしれないし、従弟殿にはこうやって抱きつけないからなのかもしれない。
従弟殿の背中に回していたうちの片方の手を、従兄殿の手に重ねる。
反対の手が私の手を隠すように覆い被さった。

「感謝している…氷雨、従兄殿はいい加減やめてくれないか」
「ふむ、では、馬超殿。今日は終わりか?」
「ああ、じゃぁな」

さらりと離れていく彼を視線で追うこともなく、もう一度従弟殿に抱きつく。
ぎゅうぎゅうと抱きしめて、身体の力を抜いた。
彼がぎゅう、と抱きしめ返してきて、十秒後くらいに離れる。
唖然としている無名軍師と子育て将軍が何処か面白かった。

「その、関係は?」
「ん?」

無名軍師の声に首を傾げる。
どうやら、私の行動が理解出来ないらしい。

「徐庶は仕事の相手、趙雲殿は師、馬岱殿は甘える場所、その場にあった行動をしているだけだ」
「…割り切り過ぎじゃないか?」

無名軍師の声にふと、わかった。
どうやら、親しいと思っていた私の知らぬ一面が見えた所為で不安定になっているらしい。
とはいえ彼に対する時の私を他の二人は知らない訳だ。
自分の顎に手を添えて、首を傾げる。

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甘える私は仕事はしないし、ものを学びもしない
そう告げれば、彼らは、はあとため息を吐いた。

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