鬼神 | ナノ



きょうし 2/2


「話しますッ…話しますから、離れてください」
「!…すまない」

どうやら彼も回りを見ることが出来たらしい。
ハッとしたように謝罪しながら距離を置いてくれた。
胸を撫で下ろしてから、その顔を見ようと、したはずだ。

「司馬師様、どうかなされましたか?」
「…そのような不用意さで、本当に私の護衛が務まるのか」
「子元はちょっと黙ってなさいな、賈充、どういうことか話してくれる?」

張春華様こええええ!
司馬師様がうって、うって言った。
と、賈充殿が口を開く。

「申し訳ありません、初めて自分から類する兵法を教えてくれ、と…」
「昭が?!本当なの?」
「ええ、まあ、確かに言いましたけど」

司馬昭様が頭を掻きながら、首を傾げた。
思わず私も首を傾げる。

「元々司馬昭様はご存知だったのでは?」
「いや、氷雨の引き出し方が上手かったから、俺も知ってることを初めて知ったんだけどな」
「つまり考えついたんですか、あの場で…流石です。では、もしかして、あちらも?」
「あの伏兵の話か?」
「はい。伏兵を潜ませる方法が少し特殊ですので、使いどころが難しいのですが、記録は残っております」
「うわ、本当か、結果は?」
「どうなったと思われます?」

苦笑しながら答えれば、司馬昭様は一度俯き、すぐにぱっと顔が上がった。
それから、楽しそうに、何処か真剣に私を見た。

「でも、水攻め使われたら終わり、だよな、アレ」
「はい、策は使いどころが重要だということです。では、あの伏兵を前回の所で使うにはどうしますか?」
「あー…山で、近くに反乱しそうな川は無い」
「今回は天気が晴れの久しく雨が降っていない状況で考えましょう」
「じゃぁ、とりあえず東から二番目…いや、一番南の道に落石させて、道を塞ぐ」
「なるほど、次は?」
「攻めて来る奴らの通り道が一つになるから…いや、だめだ、近すぎるってことは、反対か」

脳内で戦が繰り広げられているのだろう。
あー、と煮詰まっているようである。
私も司馬昭様が口にした通りに脳内の地図を変化させていく。

「では、先に伏兵を効果的に発揮できる状況を考えましょう」
「効果的…ってことは、ああ!そうか!火計と併用すればいいのか!」

彼自身の頭の中を説明してこうだろう!と胸を張る。
なんと可愛らしい。
なんて思ったことは全く顔に出さずにっこりと笑ってみせる。
私の表情で正解したのがわかったのか、よっしゃ、と嬉しそうに拳を握った。
それを見てから、賈充殿を振り返る。

「こんな感じです」
「…なるほどな」

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