鬼神 | ナノ



両想い 2/2


息が詰まりそうなほどに真剣な感情。
私は唇を噛んだ。

「氷雨、頼む…私から離れるな」
「っ…」

その懇願するような声に、子元様の柔らかな部分を預けられた気がして。
今までも頼られていたけれど、それ以上に、支えとして求められた気がして。
私も、覚悟を決めるべきなのだ、と一度目を伏せた。
体を起こして…子元様の制止も拒否して、そっと子元様の頬の傷に手を触れる。
この邸に帰ってから、手当てをしていないのだろう。
つまり、ずっと私を見ていてくれたのだ。
それは自惚れかもしれないけれど、きっと事実。

「子元様、」

私からそっと唇を寄せる。
ふわり、と子元様の香りが鼻腔を擽った。
ゆっくりと離れると、驚いた顔をする子元様と目があう。

「私は、私の意志で…子元様のお側に置いて欲しいのです」
「っ、」
「子元様が私のすべてなのです。自分自身の命よりも、子元様が大切なのです」
「ならば、私が私よりもお前を大切にしよう。それくらいは、許してくれ」

何よりも優先するとは約束できないが、それでいいのだろう?
私の心を見透かしたような言葉に、笑って頷いた。
嬉しそうに破顔するその顔は、私が初めて肉まんを献上したあの時と同じ顔で。
ああ、私はあの時からきっと、この人に魅入られていたのだ、と諦めた。
彼から逃げることなどできるはずもなかった。

「氷雨、愛している」
「私も…子元様のことをお慕いしております」

気恥ずかしさが勝って、目線をそらしながら告げる。
ああ、と嬉しそうに頷いた子元様は私の額に一つ唇を落として、ゆっくり休め、と席を立った。

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