鬼神 | ナノ



たおれる 2/2


「とはいえ、ゆっくり養生すればすぐに良くなるじゃろ。もともと毒には耐性があるようだしの」

一週間も休養をとれば、治るじゃろうて。
そう笑った医者は解毒剤はすでに処方したので問題ないぞ、と去っていった。
はああああ、と深いため息を吐いて、椅子に寄りかかる。
父上も母上もホッとしたように息をついていた。

「はー…ヒヤヒヤした」
「氷雨も心蔵に悪いことをするわね…」

元姫が俺に同意するように首を左右に振る。

「だが…無事で良かったというところか。もし氷雨が倒れた時のことを考えると…恐ろしいな」

賈充が額を押さえた。
確かに、氷雨がもしいなくなったら、兄上は荒れるだろうし、元姫は落ち込むだろう。
賈充に気を配れる人間もいなくなって、俺の安心できる時間だってなくなるのだ。
文鴦は好敵手が居なくなるし、鈴蘭に至っては姉がいなくなり、当主になる。
この場にいるほぼ全員が何かしら直接的な打撃を受ける。
そして兄上が荒れることにより、この場の全員が間接的な打撃を受けるだろう。
つまり、彼女はそれほどまでに背負っていることが多いということでもある。

「俺もうちょっと真面目になるわ」
「えっ…」
「し、司馬昭殿?」

諸葛誕の戦慄いた声になんだよ、と眉を寄せた。
くつくつと笑う賈充が俺を見て言う。

「殊勝なことだ…普段からその調子でやってくれればいいんだがな?」
「うるせぇよ。義姉上を支えるのに、めんどくせ、とか言ってられないだろ」

どうせ、今頃兄上が求婚してるだろうし。
俺の言葉にもう一度全員がざわりと、俺を見た。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -